院長の独り言 68 ; 我が家に十姉妹がやってきた
二十歳の頃だったと思うのですが、大学から帰宅した時に、庭に面している廊下の隅に、何やら蠢いている雀のような小さな鳥を見つけました。
かなり衰弱している感じで、早速、取り上げてみると、雀ではないようです。
手の中でぐったりしていて、今にも死にそうでした。
嘴に水を含ませて休ませた後、近くの本屋さんに鳥類図鑑を買いに行きました。
十姉妹(じゅうしまつ)だとは大体分かっていたのですが、一応確かめてみると、やはりその鳥でした。
図鑑によると、この鳥は野生種がないそうで、中国で飼鳥として作られた家禽鳥だそうです。
16世紀頃、我が国に入って来たのです。
自宅で飼育する鳥の中で、一番飼い易い鳥なんだそうです。
先ほどまでグッタリしていた十姉妹が、直ぐに元気になってピーピー囀り、暫くすると餌もよく食べるようになってきました。
何処か近所の家で飼われていて、なんかの拍子に逃げ出して来たものと思い、庭から放してみました。
ところが放した途端、家の中に逃げ込んでくるのです。
あまり飼いたくなかったのですが、しかたなく、暫く家で飼う事にしました。
本によると、十姉妹は飼いやすいけれど文鳥やインコほど人に慣れないとの事。
ところが、この十姉妹、初めは家の者を大変怖がっていましたが、2~3日で籠の扉を開けてあげると我々の手の上に乗って来る程に慣れてきたのです。
それからは、扉を開けっ放しにしていました。
家族が他の部屋で談笑していると、籠から出てきて我々の傍に来て、いかにも我々と一緒の家族だよと主張するようにピーピー話しかけてくるのです。
しばらく囀ると自分の籠の巣に入り、餌を食べたり寝たりしていました。
仕草は可愛いし、頭もよさそうなので、これは拾いものだと云う事になりました。
それから、家族全員の大切なペットになったのです。
春夏秋のいい天気の時は窓を開けていましたが、このピーちゃんは内外を自由に出入りして遊んでいました。
オスだと云う事が判明したので、鳥屋さんから、メスの十姉妹を買ってきて繁殖を試みてみましたが、このピーちゃん、お嫁さんの鳥より人の方が好きなようで、いつも、我々家族の方に来ていて結局子供は出来ませんでした。
我が家に飛び込んで来てから二年半ぐらい経った頃、籠の留り木からすべり落ちるようになり、上手く止まり木につかまる事が出来なくなったのです。
巣の中でじっとしていることが多くなつてから暫くして、眠るように息を引き取りました。老衰のようでした。
鳥は木に止まれなくなると寿命が尽きて死ぬと云う事を身をもって知りました。