院長の独り言 21 ; 医療という仕事、その構造的な矛盾を中学生につかれる

開業して直ぐに、八王子の或る中学校の校医を仰せつかりました。

郊外にある、自然が豊かな大変環境の良い学校で、運動場も広く、生徒達も伸び伸び学校生活を楽しんでいるようでした。

其の頃、今では考えられない程に歯科医が不足していたので、生徒達の口の中は虫歯や歯肉炎が多く、おまけにブラッシングの指導もやっと公的に行われ始めたという時代でした。

6月4日のいわゆる虫歯予防の日には、当院の歯科衛生士2名と学校の講堂で大きな歯の模型を見せながら、歯の大切さとブラッシングの重要性を、一生懸命講義しました。

講演を終えて質問の時間、その頃の生徒達は結構多くの疑問をぶつけてきましたが、一つだけ今でも鮮明に覚えている質問があります。

あるぽっちゃりとした紅顔の美少年が大きな声で、『なんで歯医者さんが虫歯を少なくするような事をするのですか?』と質問してきたのです。つまり、虫歯が少なくなったら、われわれ歯科医師は商売にならないのだろうと…。

先生と生徒みんな、会場全体が大爆笑となり、それからは和気藹々の素晴らしい歯の衛生指導会となりました。

なんで歯科医師の不利になる事(=虫歯や歯周病を減らす事)を我々がしなければならないか?それは医療とは非常にパブリックな仕事だからです。医療の目的は、決して利潤の追求のみ(=極端にプライベートな事)にはならないのです。何とか、この構造的な矛盾を生徒達に理解して貰えたようです。

それから約30年間、その中学校に校医として指導にいきました。

あの生徒は今頃どうしているかな~。

シクラメン

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