院長の独り言 244 ; 江戸川柳から考える
『絵で見ては 地獄の方が 面白し』
蓮の花が咲き乱れる、穏やかな極楽に比べて、地獄は血の池地獄に、仁王様や赤鬼青鬼が棍棒を持ってドヤシつける、辺りは針の山と変化に富んでいて、さぞかし毎日が退屈しないで、面白いだろうと云う江戸時代の川柳です。
見ているだけでは、大した事では無く、却って楽しいのではないかと思われるようでも、実際に体験してみると、二度と嫌だと云う事は結構、あるものです。
戦争映画で兵隊が機関銃に打たれて、次々に倒れて行くシーンや、ロケット弾を打ち込まれて、ビルから大勢の人が逃げて行くシーンなど、アクション映画を見て、手を叩いて見ているのは、架空の世界の出来事なので安心していられるからです。
実際、小生が小さい頃に体験した戦争での、本当の爆撃は、いま思い出しても恐ろしい体験で、今でも時々、夢で魘(うな)されてしまいます。
もし自分が本当に地獄に落ちて、血の池地獄に投げ込まれたら、すぐに気がおかしくなるに間違いないでしょう。
上記の地獄川柳を詠っていられるうちは、心にユトリがある、実に幸せな状態であると云う事です。
明治維新以来の我が国のあり様を見詰めてみると、国民が頑張って、ある程度良い線まで行くと、まるで地獄に突き落とされてしまうような連続です。
危うく白人国家の植民地から逃れて、アジアで唯一の先進国になったと思ったら、関東大震災で国中は壊滅状態になってしまい地獄落ちです。
そこから必死に頑張って、盛り返してきたら、アメリカに壊滅されてしまい地獄行き。
またまた必死に頑張って、戦後の大復興を遂げると、バブルが弾けてしまい大不況で地獄行き。
何とか不況から脱したかと思いきや、今度は東日本大震災で、またまた我が国は雲行きが怪しくなってきて、地獄行きの様相を呈してきました。
日本ほど、このように浮き沈みがある国も、本当に珍しいのではないでしょうか。
雲の上から神様は、『見ていれば 日本の国は 面白し』と愉しんでいるのでしょうか。
あるいは、神様は礼節が無くなった我々日本人に警笛を鳴らしているのでしょうか。