院長の独り言 83 ; 秋田犬を飼っていた頃

私が大学生の頃、秋田犬を飼っていた話は何度かブログに書きました。

勿論、秋田犬は成犬になると、かなり大きくなります。

キチッと躾をしておかないと、万が一の時に大変な事故につながります…。

生後3か月で秋田犬を引き取ったのですが、売り主からは口を酸っぱくして何度も何度も、少し『シツコいな』と思うほど注意を受けました。

『お手』や『お座り』なんか教えるのは二の次で、まず、初めに絶対教え込まなければならないのは『待て』と『ダメ』の徹底でした。

犬を引き取りに行った時、3か月の幼いその秋田犬があまりに可愛くて、其の時は『ハイハイ』と、うわの空で返事をしていました。

自宅へ連れて帰る道すがら、偶然、散歩していた茶色の中型犬に出会い、その時に『ワンワンワンワン』とひどく吠えられ威かされて、私にしがみ付いて大変怖がっていました。

その中型犬に威かされた事件は念願の秋田犬が手に入った事に興奮して、私は全く忘れていました。

買った秋田犬の名前は、正式には『千代藤号』と云う、いかにももったいぶった名前でしたが、家族からは『フジ、フジ』と愛称で呼ばれていました。

犬は大体6か月から8か月で、からだの成長が止まります。

フジも6か月ぐらいで大きな犬に成長しました。

フジが家族の一員になってから、6か月くらい経ったある日、朝の散歩で、自宅に連れて来た時に吠えてきた、あの中型犬に出会いがしらになった時に、アッと云う間にその犬に飛びかかっていったのです。

不意を突かれた事もあったのですが、その時のあまりの力の強さに、私はつい、手綱を放してしまったのです。

相手の犬にひどい危害を加えるかとドキッとしたのですが、幸いその中型犬の逃げ足が早く、キャンキャン泣きながら、脱兎の如くすっ飛んで行ってしまいました。

それ以来、その犬は二度とフジに近づく事は有りませんでした。

その事件をきっかけに、私は売主の言った通り、『待て』『ダメ』の命令を徹底的に教え込みました。

フジは普段おとなしい犬で、散歩中に初めて会う犬にでも吠える事など一度も無かったので、その時は本当にたまげました。

根は非常に用心深く、執念深い犬なのだと、それからは散歩時には緊張しまくりです。

毎日、早朝と夜2回の散歩の役目は、殆ど自分の役目でした。

初夏のある朝、いつものように4時頃、自宅を出ていつもの散歩コースを、訓練も兼ねているので、フジを身体の右横に従えて走るように早足で進んで行ったのです。

こんな早い時間帯にはせいぜい新聞配達のお兄ちゃんにしか、お目にかからないのですが、その日に限って、我々の百メートルぐらい先に女の子が父親と遊んでいて、『キャーキャー』騒いでいたのです…。

それを見てフジが興奮したのか、例の馬鹿力でアッと云う間に手綱を振り切って、その女の子目がけて突進して行ったのです。

『いけない!』と思い、咄嗟に『待て!!』『ダメ!!』と大声で怒鳴った途端、フジがその女の子に飛びかかる寸前にピタッと止まったのです。

私は女の子の父親と眼を見合せて心からホッとしたのです。

『よく訓練された犬だねぇ~』と感心されましたが、内心では『待て』『ダメ』を強く教え込んでいて本当に良かったと思う以上に、自分の不注意で危うく大事故になるところを防げた事を、神と売主に感謝したのです。

実際、この大型犬の秋田犬フジに傍に来られると、殆どの人は身体がスクむ程の迫力があるのです…。

それは官舎に住んでいた時に、空き巣を撃退した事でも証明されました。

流石の空き巣も『フジ』に傍で図太い声で吠えられると、とてもじゃないけど家に入ってくる気力が失せてしまったのでしょう。

今思えば、あの大きな犬をよく面倒看ていたものだと、自分ながらに感心するやら、事故が起こらなくてホッとするやらです。

若くして亡くなったフジの思い出は、本当に忘れ難いです。

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