院長の独り言 369 ; 山のあなた
ゲーテ(独)、エリオット(英)、ホイットマン(アメリカ)、高村光太郎(日本)、中原中也(日本)、萩原朔太郎(日本)、李白(中)、杜甫(中)、そして最近、詩集を発表した谷川俊太郎(日本)など、素晴らしい詩を歌った人は古今東西、大勢います。
どの人も、心の中の熱いほとばしりを言葉で表現し、詩にして歌っています。
私にとって忘れがたいのは、時折、頭の中に浮かんでくる『山のあなた』です。
浮かんでくる時は、口ずさんでしまう程です。
浄土真宗のお寺さんの住職が、母方の祖父と云うことも関係しているからでしょうか。
以前から、この詩の内容が、浄土真宗宗祖 親鸞の思想と似ているような気がしていたのです。
詩を紹介します。
山のあなたの空遠く
幸い住むと人のいふ
ああ われ人を尋(と)めゆきて
涙さしぐみ帰りきぬ
山のあなたに なほ遠く
幸い住むと人のいふ
『幸いは、遠くに探しに行っても決して見付ける事は出来ませんよ。今の自分が幸せだと気がつかなければ』と言っています。
『幸せは直ぐ側にありますよ。気がついて下さい』と言っているのです。
この詩は、ドイツの詩人、カール•ブッセの作です。
ブッセは、祖国ドイツより、日本で名が知れています。
何故なら、上田敏があまりにも素晴らしく翻訳したからです。
正直、『山のあなた』は、上田が作ったと言っても良いくらいと思います。
彼は小泉八雲に師事し、外国語に堪能であったので、ヨーロッパ文学を沢山翻訳している明治初期の文学者です。
残念な事に41歳の若さで急逝しています。
親鸞が唱えているのは、『常に大きな力に包まれて、そして、その力に支えられてわれわれは生活している事が最大の幸せである』と言っています。
カール•ブッセの『山のあなた』に似ていませんか。
浄土真宗のことばかり書いていますが、小生の祖父が真宗のお坊さんでしたので勘弁して下さい。
自分としては、どんな宗派の人でも、宗教を信じて生きている人は皆仲間だと思っているのですから…。