院長の独り言 370; 消えた都電
私が中学生の頃(1950年頃)は、東京都内の交通機関として、都電が大いに幅を利かせていました。
都電とは、路面電車のことです。
路面電車の走っている同じ道路を、自動車も走っているのです。
当時、自動車が今と違って大変少なかったので、一つの道で、電車も自動車と一緒に走行するのが可能でした。
現在、都内で両者が一緒に走るのは不可能です。
たちまち交通渋滞を起こしてしまい、通常の経済活動の支障を来すどころか、全く動かなくなってしまうでしょう。
この都電の走っていた道路は、幅が広かった上に、都内の繁華街を縦横無尽に結んでいました。
小生が大学に通いだした頃には、気がついてみると、都電が東京の繁華街から殆ど消えていたのです。
都電が消えてしまったことに、自分としては当時、あまり関心がなかった事も確かです。
その都電を廃止した場所を利用する事が出来たので、莫大なお金をかけて土地を買収したりして幹線道路を新しく造るのではなく、最小限の手間と時間で立派な自動車専用道路が誕生したのです。
現在、その道路の上に、首都高速道路が走っています。
車で高速道路を走っていると、下の道路が見えますが、昭和30 年代の都電が走っていた風景が脳裏をかすめるのです。
都電を利用していた中•高校生の時は、乗り心地が悪く、自転車より遅い都電に乗るのは苦痛でしたが、もう一度、いま乗ってみたい気がするのです。
都電車内は、あらゆる年代の人々が乗り合わせ、知らない人同士の会話で賑やかでした。
あのガタガタ揺れて、運転手は立位で運転している都電が懐かしくて仕方ないです。
無くなってみて、はじめて分かる過去の事物…。
本当に、人間社会は進歩しているのかな…