院長の独り言 347 ; 前の千円札は、誰の肖像画が印刷されていましたか?

現在の千円札に印刷されている肖像画は野口英世のものです。
今日、コンビニで貰ったお釣りの中に、一代前の旧千円札が紛(まぎれ)込んでいました。
旧千円札のお札の色は、現行の淡いブルーと似ていますが、描かれている肖像人物は野口英世と異なり、皆様もご存知の夏目漱石です。
漱石と云えば明治の文豪です。
小中学校の教科書に必ず彼の小説が載っています。
漱石の処女作は、強烈な社会風刺小説『吾輩は猫である』です。
また、全ての学園小説の基になった『坊ちゃん』を知らない人はいません。
しかし、漱石は人間の内面の葛藤や心理小説も得意なのです。
『こころ』や『それから』、『門』といった一連の作品群です。
どちらかと云うと、自分の体験を基にした複雑な人間模様を展開している小説が目立ちます。
漱石はユーモア小説作家の如く思われているところがありますが、とんでもない誤解です。
『明暗』を書いている途中で、50歳の若さで亡くなりました。
病名は胃潰瘍です。
現在、胃潰瘍で命を落とすことは先ずありません。
もしかすると、漱石も胃潰瘍ではなく、胃がんだったのかも知れませんね。
何しろ漱石が小説の題材になる美味しいところは殆ど書いていると言われているのですから、後発の小説家は大変です。
これは画期的な題材だと書いてみると、漱石がとっくに取り込んでいたと言った具合です。
矢張り、お札になる人は、その分野の天才ですね。
ここ数年間、ノーベル文学賞の有力候補だった村上春樹は、残念ながら今年も見送りでした。
小説は本当に難しいものですネ。
日本語の表現では素晴らしいのですが、英語など外国語に翻訳すると平凡な感じになってしまう場合も多いのでしょうか。
もし漱石の小説を外国語に翻訳した場合、漱石が心血をそそいだ文章を外国の人に正確に伝える事が出来るのでしょうか。
伝える事が出来れば、世界中で漱石の人気が沸騰するでしょうね。
三島由紀夫は、翻訳されることを前提とした小説を書いていた、ともいわれています。
彼の文章は、耽美的な、とても真似のできない美しい日本語でしたが、あの美文を外国語で表現し得るのでしょうか?
私の個人的な小説の好みでは、志賀直哉のものが好きです。
志賀直哉の文章は簡潔で、こちらも美しい日本語です。
特に『和解』は、お勧めですよ。

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