院長の独り言 261 ; スカイツリーと五重塔

世界一、ノッポの電波塔が話題になっています。
いよいよ来年5月に一般公開される、高さ634メートルの東京スカイツリーの事です。
着工当時から注目の的で、東京タワーの高さを抜いた時は、マスコミに大いに騒がれました。
とうとう、上海にあるテレビ塔を凌駕(りょうが)して、世界一の高さの電波塔になったと云っては、話題になっていました。
この塔が完成するまでは、我が国では、電波塔と云えば東京タワーでした。
東京タワーは長い間、東京のシンボルで、観光名所だったのは、皆さんご存知の通りです。
全くの数合わせ、333メートルの高さを誇り、展望台からは都内全域を見下せます。
東京湾は当然として、晴れた日は遠く富士山まで、良く見る事が出来ます。
東京に初めて観光に訪れた人で、この塔に登らない人は、まずいなかったでしょう。
東京タワーが完成した1958年当時、東京の景色は今とは全く違っていて、大げさに言えば、真っ平らといった風情でした。
今となっては、日常の光景としか思えないでしょうが、超高層ビルなど皆無でした。
今で言う建築基準法で、ビルの高さは31メートルと制限されていたのです。
私もよく覚えていますが、東京タワーに遅れること5年後、1963年、霞ヶ関に日本で初めての超高層ビルが建った時は、東京タワーの時も驚きましたが、違った意味で、本当にビックリしました。
高さは147メートルと、高さが東京タワーより低いのですが、東京タワーは建物と言うより、鉄塔を大きく高くした感じです。
ところが、この霞ヶ関ビルは、映画で見るニューヨークの超高層ビルを彷彿させたから驚いたのです。
その後、東京では、副都心新宿を中心に、超高層ビルが雨後のタケノコのように出現してきました。
40階を超えるマンションも珍しくありません。
その結果、東京タワーから発する電波が、超高層ビルに遮断されてしまい、東京タワーは集約電波塔として、要を為さなくなってきたのです。
止むを得ず、東京タワーに変わる新しい電波塔が、必要になってしまった訳です。
東京スカイツリーはあまりに高い電波塔なので、もし大地震が東京に発生したら、倒壊しないのか、大変、心配はされていました。
3月11日の東日本大震災の時、殆ど完成している東京スカイツリーの、高さ600メートル付近で作業をしていた鳶(とび)の人達の話によると、凄く揺(ゆ)れたのは当然ですが、その揺れは半端でなく、左右に最大6メートル揺れたとの事…。
タワーが弓なりになり、大袈裟でなく、地上に振り落とされるのではないかと、必死に鉄柱にしがみ付いて、難を逃れ、皆生きた心地がしなかったそうです。
ところが、揺れが激しかったのは事実ですが、地震の後に、塔全体を細部にわたり検査したところ、故障箇所が全く見つからなかったそうです。
話は変わりますが、法隆寺の五重塔をはじめ、古来から千棟以上も建てられている五重塔が、なぜ大地震でも倒壊しないのか、不思議がられていました。
五重塔の周りに存在している本堂や宝物殿などは崩壊しているのに、五重塔は倒れません。
建築の専門家によると、五重塔の真ん中には、浮いた心柱(しんばしら)があるのだそうです。
要するに、心柱は一番上の天井から吊るされていて、土台にはくっ付いていないで、浮いている状態なのです。
この心柱が、地震の揺れ方向と、反対に揺れ、地震の揺れを吸収し、五重塔は倒壊しないのです。
東京スカイツリーは、その理論を応用しているのだそうです。
五重塔のように、心柱を持った建築物は、日本独特のもので、世界には例がありません。
五重塔の幾つかは、戦火や放火などの火事によって、消失していますが、地震で倒壊した事は無いのですから、東京スカイツリーが大地震の犠牲になる事はあり得ないのです。
古きを温(たず)ねて 新しきを知る…

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