院長の独り言 258 ; 日照りに不作なし
『日照りに不作なし』とよく言われている事に、一寸、違和感を感じますが、本当の事です。
雨が降らないと、米でも、野菜でも、成長しないで枯れてしまう気がします。
今年のように7月に入ってから、日本全国、毎日の猛暑が続いていると、お米が不作になるのではないかと正直、心配してしまいます。
ところが、雨がシトシトと降り、日照りの正反対の冷夏こそ、お米は不作になってしまうのです。
もう30年も前になってしまったので、殆ど話題にもなりませんが、フィリピンのピナツボ火山が噴火した年の事です。
噴火の影響で、酷(ひど)い冷夏になり、その年の秋以降、お米屋さんから国産米が見事に姿を消してしまい、勿論、スーパーマーケットでも、国産米にお目にかかるのが出来なくなってしまったくらい、大不作になってしまったのです。
代わりに、高齢の方はご存知と思いますが、『タイ米』が売られていたのです。
タイ米はジャポニカ種より、かなり細身のインディカ種で、パサパサしていて、われわれ日本人のように、箸を使って、おかずと別々に食べる食習慣を持つ者にとっては、あまり旨いとは感じられないお米でした。
その年の後半、急にパンを食べる人が増えたと言われたのを覚えています。
ただし、このタイ米、カレーライスとして食べると、結構、美味しいのです。
タイでは、長い伝統と云うか習慣として、お米を素手で食べています。
ジャポニカ種のように、少々、粘り気のあるお米は、日本では良くても、タイでは不向きなのでしょう。
食にもグローバリゼーションが進む昨今、タイでも、素手でご飯を食べる人は少なくなってきているでしょうし、甘みある日本産のお米の人気が出て来るのも、時間の問題でしょうか。
何故、『日照りに不作なし』なのか、種明かしをすれば簡単なのです。
昔はやはり、日照りで、雨量が少なければ、お米などの農作物は、不作だったのでしょう。
ところが、現在の日本は、あらゆる田畑において、灌漑が完璧に設備されています。
灌漑のお陰で、水の供給に関しては全く心配がない訳です。
唯一、農作物の出来不出来に、決定的な影響を与えるのが、太陽と云う事になるのです。
いくら水が充分に足りていても、太陽からのエネルギーが不足してしまうと、お米や野菜が育たなくなってしまいます。
今年のように、毎日のカンカン照りの夏であれば、嬉しい事に、お米の大豊作は間違いないでしょう。
ただし、大きな台風が日本列島を直撃した時が心配です。
そうならない様に願いたいですね…。
アメリカ、ロシア、フランス、オーストラリアそしてブラジルなどの農業大国は、食料を輸出するほどに収穫出来るのです。
何処の国でも、自前で食べて行ける程の主食が収穫出来れば、国民の心に余裕が生まれます。
せめて我が国も、主食であるお米くらいは、余る程に生産すべきではないでしょうか。
全国民が充分、満足する程のお米が、一年中、日本の米蔵(こめぐら)に入っていれば、こんな安心出来る事はありません。