院長の独り言 205 ; 被災した水族館によせて
ホームページやブログで紹介しているように(『石川歯科医院についての情報』2010年7月15日 http://stygle.sakura.ne.jp/ishikawadent_info/blog/?p=1204 http://stygle.sakura.ne.jp/ishikawadent_info/blog/?p=1195 )、石川歯科医院には、2階のカウンセリング室にハリセンボン2匹、待合室に小さな熱帯魚が10匹ぐらい、3階の待合室にカクレクマノミなどの海水魚と淡水フグ(スバッティー)がいます。
3月11日(金)の地震の際には、水槽もかなり揺れました。
2階と3階の水槽の周りが水浸しになった程です。
魚たちの可愛い仕草が、歯科治療を受ける患者さんの緊張感を少しでも和らげてくれるものと願い、飼育しているのです。
しかし今回の地震の時ばかりは、魚たちが水槽から飛び出しそうになり、患者さんもスタッフもビックリ。
一番、驚いたのは、当の魚たちだったでしょうか。
今日で大震災から10日間、経ちました。
今朝、たまたまテレビ番組を見ていたら、福島原発近くのいわき市の水族館『アクアマリンふくしま』が、大津波の被害に遭い壊滅してしまい、約10万匹の魚が犠牲になった事を淡々とアナウンサーが報告していました。
淡々に言われれば、言われるほど、事の重大さがこちらに強く伝わってくるものです。
飼育係の人が『折角、大切に育ててきたのに…』と眼に涙をためて訴えていて、こちらも気が滅入ってしまいました。
自分は少年時代、釣ってきた魚やお祭りの縁日で買ってきた金魚などを随分と飼育しました。
その頃はいくら魚好きでも、飼育している魚が人に馴れるとは思っていませんでしたし、事実、馴れた魚は全くいませんでした。
何しろ魚を見る事が好きだったので、成人してからも機会を見つけては、日本全国アチラコチラの水族館を数え切れないほど見学に行きましたが、人に馴れている魚はついぞ見た事がありません。
気持ちは常に一方通行で、魚は一向に懐いてくれません。
自分としては、せいぜいエサ目当てで魚が寄ってくる事で十分に満足していたのです。
ところが診療所の待合室に魚を飼ってみて、意外な新発見をしたのです。
毎日、餌を与え、声を掛けていると、魚が人によく馴れてくる事が判明したのです。
これは、本当に意外な発見でした。
特にハリセンボンは、毎朝、2階のカウンセリング室に入って行くと、水槽の一番手前に待機していて、身体を左右に激しくクネらせての大歓迎です。
そして前ビレで私に、沢山の水を掛けてきます。
このハリセンボンくんを一番、可愛がっている息子には、特別に愛想を振りまき、息子の掌に収まり、頭を撫ぜて貰うと、まるで恍惚とした表情を見せるのには、更に驚きです。
知らない人を見ると、水槽の後方にある岩の中に隠れてしまいます。
多分、大きな丸い、青い眼から、こちらがよく見えているのでしょう。
小生にも、息子ほどではないのですが、ある程度は馴れてくれていて、私を見つけると、バチャバチャとオーバーに尾ヒレを揺すって近付いて来ますが、さすがに掌には乗りません。
幾度かご対面している患者さんには、近付いてきて愛嬌を振りまくので『本当に可愛い子ねぇ~』となります。
しかも、このハリセンボンには、ご機嫌がナナメな日もあるのです!
勿論、原因は不明ですが…。
まさか魚に感情があるとは思ってもなかったので、正直、驚いているのです。
話はいわき市の水族館壊滅の件ですが、普段、我々は水族館を訪れた時は、綺麗な熱帯魚や海水魚に感嘆し、見た事のない珍魚に興奮しているだけです。
一方、飼育係の人はと云うと、お客の見えない裏方として熱帯魚や深海魚、サメやフグなど、どの魚に対しても愛情を持って、一生懸命に世話をしている事でしょう。
魚たちをまるで、自分の子供の様に世話をしていると思うのです。
魚も飼育係の人たちに、信頼感を持っていたかも知れません。
うちのハリセンボンのように、まるで人間のように振る舞う魚も、沢山いた事でしょう。
きっと担当の飼育係に、大変、馴れていた魚もいた筈です。
その子たち10万匹以上を、アッと言う間に失ってしまったのですから、本当に辛い事、この上ないと心の底から同情します…。
一匹の魚が死んでも、辛いのですから…。
いわき市の水族館の皆さまには、今回の地震から復興した暁には是非、水族館の再生をお願いしたいと思います。
小生も必ず見学に行きます!