院長の独り言 74 ; ザリガニから世の厳しさを学んだ
息子が小学生のころ、近所の小川でアメリカザリガニを捕まえてきました。
その中で、一番デカイ雌のザリガニを金だらいに入れて、息子の生物の勉強がてら飼う事にしました。
2~3日経ったある朝、金だらいをのぞいてビックリ、たらい一杯に何やらうごめいているではありませんか。
最初は何だか分かりませんでしたが、落ち着いてルーペでじっくり見てみると、その小さいうごめく正体は驚くなかれ、ザリガニの子供だったのです。
数百匹の小さなザリガニがたらい一杯に存在する光景は、ただただ驚嘆するだけでした。
知識不足でしたが、ザリガニは卵から孵るのだとばかり思っていました。
まさか、ザリガニの形で親から数百匹も直接生まれてくるとは思いも及びませんでした。
息子も娘も家内も勿論、私も大人のザリガニを小さく小さくした、ミニチュアの手足もひげも目も、親ザリガニにそっくりな(当たり前ですが)数百匹の子供のザリガニを見て、生物の誕生の神秘に声も出ませんでした。
子供二人の理科のいい勉強になったと云うより、自分の知識の肥やしになったのでした。
親ザリガニはこの世の摂理通り、すぐに、息絶えてしまいました。
息子は、庭の隅に親ザリガニを埋めて手を合わせていました。
残った数百匹の子ザリガニがこのままでは不憫なので、何とか生かして立派な大人のザリガニに成長させようと、私と息子で親ザリガニを捕獲した小川に放しに行きました。
小川に子ザリガニを放してホットした途端、見るも無残な光景が我々二人の眼に飛び込んできたのです。
『ウソー!』と思わず叫んでしまいました。
そこには信じられない事件が起きたのです。
皆様お察しの通り、フナのような小魚が子供のザリガニめがけて群がって来て、瞬く間に子ザリガニを食べつくしてしまったのです。
あまりの残酷な光景を見せられて、茫然とするやら、自分の浅はかな行動に憮然とするやらで、その日は心が沈んでしまい、その話を聞いた家内と娘は涙ぐんでいました。
今でもその事を思い出すと、心の中で手を合わせてしまいます。