院長の独り言 70 ; 東照宮の宮大工は完璧な仕事をしなかった

日光の東照宮は『日光を見ずして結構と云うべからず』と言われているように、世界に誇る素晴らしい我が国の宝物です。

当時の宮大工が完璧を期して、全精力をつぎ込んで必死に完成させたものと思います。

ところが、物の本によると、わざと建物の柱の一本を上下反対にしたり、天井の一部の絵柄をわざと変にしたりしているそうです。

東照宮に行った折りには、その変な場所を探すのも一興ですヨ。

あの建造物を観れば、大勢の宮大工が全精力を出し切って仕事をした事は明らかです。

『自分たちの作った東照宮は、非の打ちどころのない完全完璧な建物である!』と胸を張って、自慢したいはずです。

その完璧なものに、わざと1~2ヶ所欠点を付けているのです。

『世の中に完全無欠なものは存在しない。完全なものが出来たらそこで終わりである』

宮大工は、『世の中に完璧なものは存在しないから、努力の甲斐がある!』と主張しているのです。

禅問答のようですが、彼ら名人は宇宙の真理真髄を突いているような気がします。

完全なものが出来てしまったら、それ以上する事が無くなると云う事は、もう努力する必要が無くなると云う事のようです。

角度を変えて考察すると、我々機械じゃないのですから、完璧主義なんて、息苦しくて息苦しくてこんなに辛い事はないと思います。

欠点がアチコチに有るから我々ホッとするし、努力の甲斐が出てくるのだと思います。

東照宮を建てた宮大工の皆さんは、わざと傷をつけて『遊んで楽しむ』程、腕に自信があり、心の余裕もあったのでしょう。

『完全無欠な事など、人間の世の中には何一つ存在するはずが無い』と忠告しているのかも知れません。

話は変わりますが、われわれ石川歯科のスタッフも、何とか患者さんの喜ぶ顔が見たくて、完璧な治療を目指しているのですが、宮大工のように余裕を持つ程に至らず、『ただただ毎日努力を…』と思っています。

オリンピックで優勝する素晴らしいアスリートも存在するし、どんなに頑張っても追いつかない人も私を含めて大勢いるのです。

しかし、雲の上の人を目標にして頑張れば楽しいではありませんか。

努力の甲斐が出てくると云うものです。

不完全な自分を意識して一生懸命努力した結果、素晴らしい仕事を残している人は世の中沢山存在します。

小生も寄る年ながら、頑張らなければと思っています。

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