院長の独り言 54 ; 医療の進んだ時代に生まれただけでも、本当に幸せです!
現代の人は幸せです。
江戸時代に歯が痛くなった時は大変な苦しみだったと想像出来ます。
第一、麻酔が無いし、切削器具も存在しないのです。
死にそうに痛い時は歯を抜く以外、為すすべが有りません。
みんなで押さえてペンチのような物で歯を抜いたのでしょう。
拷問ですネ…。
命を落とした人も少なからずいた事でしょう。
有名な事実ですが、中世ヨーロッパでは歯を抜く時には、患者さんの周りでラッパを吹いたり、シンバルを敲いたりして、歯を抜く時の患者さんの悲鳴が周りに聞こえないようにしていたそうです。
絵で残っています。
小生が歯科医になりたての頃、今から45年ぐらい前には、麻酔はあったにあったのですが、現在、使用されているキシロカインという良く効く麻酔薬が発売されたばかりで、プロカインというイマイチ効きの悪い麻酔薬が主流でした。
上顎は骨の密度が粗なので麻酔薬が浸みこみ易く、麻酔は比較的良く利きましたが、下顎は骨が硬くて麻酔が効きにくく、無痛治療が難しく、患者さんも辛い思いをしていました。
今でも歯の治療は痛いから、なるべく受けたくないと言われているのはその名残だと思います。
その当時、昭和40年頃は効きは良くなくても一応、麻酔薬はあったのですが、歯を素早く削る良い道具が無かったので、治療法としては、歯が痛い時は抜歯して入れ歯を製作すると云う方法が殆どでした。
70歳以上で総義歯の人が多いのはそう云う事です。
その後、技術の進歩のおかげで、高性能切削器具が歯科治療に次から次へと登場してきました。
昔は、痛くなく歯を抜く歯科医と入れ歯を上手に入れる歯科医が名医と云われていました。
現在は麻酔は良く効くし、歯の切削器具も素晴らしいものが有るので、患者さんは安心して治療を受ける事が出来るようになりました。
小生は仕事柄、すぐ歯科の治療の事を考えてしまいますが、例えば江戸時代に生まれていて、身体がどこかおかしくなった事を想像すると身震いします。
江戸時代、そしてそれ以前の時代では、特に抵抗力の弱い幼児期に命を落とす子供が大変多かったので、三つまで、五つまで、七つまでと親は祈る気持ちで育てていたのだと思います。
七五三のお祝いを盛大に行う気持ちが実感で理解出来ます。
ひと段階ひと段落、何とか元気で良かったなぁといった感じです。
七つまで無事に育てば大人になれる確率が高い事が、其れまでの経験で分かっていたのでしょう。
現代は、幼児期で死亡する事はほとんど考えられません。
平均寿命が80歳と云う事は、やはり我々現代人は幸せです。