上顎臼歯部のインプラント治療を妨げる解剖学的リスクファクター、その名は上顎洞
先日は、インプラント治療における下顎臼歯部の解剖学的なリスクファクターについて解説しました。
今回は、上顎臼歯部における解剖学的なリスクファクターについての解説です。
上顎部レントゲン写真において、両側に赤線部に囲まれている部分があります。
名称は上顎洞といって、ここをインプラントが突き出てしまうと、蓄膿症の原因となりますので、インプラント治療における注意すべき部位となります。
特に、骨の高さが10㎜以下であると、以下3枚の写真のように、上顎洞内に骨を造る方法が一つの選択肢となります(サイナスリフトやソケットリフトと呼ばれます)。
しかし、手術の侵襲度が比較的に大きいために、患者さまは勿論、できれば術者サイドも避けたい治療方法です。
かといって、部分入れ歯の違和感を避けたい…。
そのような患者さまには、上顎洞を避けてインプラントを斜めに埋入したり(傾斜埋入法)、短いインプラント(8㎜以下のショートインプラント)を上手く配置することで、上顎洞内の骨造成を避ける方法もあります。
下4枚の写真は、上顎洞内に元々、炎症が存在し、抗生剤による薬物療法を2ヶ月間行っても軽減しなかったケースです。
骨造成を行っても、さらに炎症を惹起してしまう可能性があります。
解決策としては、骨の高さのない後方部は、ショートインプラントを傾斜埋入することで、一番奥歯まで噛むことを可能にしました。