下顎のインプラント治療を妨げる解剖学的リスクファクター、その名は“下顎管”
下顎骨の中を通っている管があります。名称は下顎管と言います。
その中には、神経や血管が通っていて、仮に、それらを傷つけてしまうと、術中の出血や術後の下唇・オトガイ部の麻痺や痛みを生じます。
その管が一番接近するのが下顎臼歯部で、同部におけるインプラント治療の大きなリスクファクターとなります。
下顎臼歯部にインプラントを埋入するケースにおいて、骨の高さが足りず下顎管と触れてしまう可能性が高い場合は、インプラントの埋入は非常にリスクが高いこととなります。
以前、そのような症例においては、同部の手術を避けるか、あるいは、いろいろな意味で患者さまに負担を強いる骨を増やす方法(骨造成法)を行うしかありませんでした。
しかし、『肉体的・経済的な負担が大きい骨造成法は避けたい』し、しかも『一番の奥歯まで使って噛みたい!』との患者さま方からの要望は強いです。
当院においては、短いインプラント(ショートインプラント。長さ8㎜以下のインプラントを指す)の埋入をお勧めしております。CTによる3次元画像データと、ある種の外科的なテクニックを必要としますが、患者さまの負担は通常の症例と変わりません。
勿論、時としては、インプラント治療を避けなければいけない症例や、骨造成法を避けられない症例が存在するのも事実です。
第二大臼歯(一番の奥歯)を使って噛みたい方は、いろいろな方法がありますので、あきらめずにご相談ください。
下の写真の症例は、右側下顎第二大臼歯部に、ショートインプラントを埋入したものです。レントゲン写真の黄色い線が下顎管です。
下顎管とインプラントまでの距離は、およそ2.5㎜です。
これで、この患者さまも奥歯で噛めるわけです。