院長の独り言 429: オヤジの厳しさ
少なくとも高校生の頃までは、オヤジを嫌っていました。
なにせ、オヤジとの会話は、常に命令調であり、説教を聞いているような感じでした。
オヤジも俺のことを嫌いなのだろうなと、単純に思っていました。
ところが、大学に入った時に、腕時計をプレゼントしてくれたのです。
当時としては、かなりの高級品でした。
お袋がニコニコしながら、『お父さんからの入学祝いだよ』と言っていました。
その時を境に、オヤジからの命令調の説教は、オヤジが亡くなるまで一度も聞いていません。
私に接する態度が百八十度変わったのです。
大学時代には『頑張っているか?』『辛い事があれば相談にのるぞ』等々。
結婚した後にも『仕事は順調か?』とか『奥さんや、子供達は元気にやってるか?』など、優しい言葉を頻繁(ひんぱん)に懸けてくれました。
家族揃って、実家に遊びに行った時は、大いに歓待してくれました。
今から思うと、優しくなったオヤジが、本当のオヤジなんだと思っています。
内心、子供に嫌がられるのを承知で、私たち子供を教育していたのでしょう。
しかし、子供時代に、あまりに長く厳しくされていたので、それからも正直、何となく、オヤジとはシックリいかず、私はオヤジを敬遠していた様な気がします。
お袋はいつも優しくて大好きでした。
オヤジなんかいなくなれば良い!などと、罰当たりなことを思っていた時期も正直あったのです。
今、オヤジの歳に自分がなってみて、オヤジの本心がよく理解されてきて、本当に心からオヤジに感謝しています。
そして同時に、もっとオヤジと色々な話をしていれば良かったと心底後悔しています。
お袋が子供に優しくしているのを見ていて、オヤジなりに子供に嫌われてもかまわないと憎まれ役を買って出て、社会に役立つ子供に育てて送り出す責任を担ったのでしょう。
オヤジの厳しい態度を端で見ていても、お袋は黙っていて、決して子供に味方などしませんでした。
オヤジに厳しくされなかったら、私は多分、社会のお荷物になっていたかも知れません。
本当に子育ては難しいですね。
テレビで野生の母熊が子供を上手に育てているのを見ていて、動物もたいしたものだと心から感動しました。
今、オヤジに会って、ビールでも飲んで、子供の頃の懐かしい話を心いくまで話合いたいとつくづく思っています…