院長の独り言 416 ;昔、予防注射はまわし打ちだった!!
B型肝炎ウイルスに感染している人は、世界でおおよそ何人かご存知ですか?
驚くなかれ、20億人と推定されています。
海外に手軽に行ける昨今、みなさん充分ご注意あれ。
現在、日本では有り得ない話ですが、私が小中学校時、予防注射は注射器を使い回ししていました。
インフルエンザ、BCG、ツベルクリン、ジフテリアなど、学校で実施される全ての予防注射は、一本の注射器と注射針で生徒全員を処理していたのです。
当時、予防注射の使い回しが、当たり前として、世間でも受け入れられていたのです。
このような注射の使い回しに関して、学校や厚生省も当然と思っていたでしょうし、親からは注射器、注射針の使い回しに何のクレームも無かったのです。
新聞でも、予防注射に関する批判めいた記事は見たことが有りませんでした。
学校医の先生が、一人の生徒を注射すると、アルコール綿でチョコチョコと針の先をなすった後、次の生徒の腕に注射をしていたのです。
B型やC型肝炎などの恐い話も、当時、話題にもなりませんでした。
大人になって今考えると、友人とも時々話題になるのですが、『よくぞウイルス肝炎に感染しなかったものだ…』と、ぞっとするやら、その幸運をみんなで神に感謝しています。
予防注射の時に不幸にもウイルス肝炎に感染してしまった人も、かなりいたに違いありません。
『治り難(にく)い疾患は感染し難い』と言われるように、A、B型肝炎はそう簡単には感染しないことも事実です。
電車の席に座ったり手すりに掴まったりしても、決して感染しません。
しかし、使い回ししていた針に、肝炎ウイルスが付着していれば、もしかすると、感染するかも知れませんね。
知識が無いということほど恐ろしいものはありません…。
現在、我が国では、B型、C型肝炎合わせて約400万人の感染者が存在するそうです。
一説には、その中の約30 %程度の人が、予防注射の使い回しによって、肝炎ウイルスに感染してしまったそうです。
勿論、今は注射の使い回しによる感染はゼロです。
使い回しは禁止ですから。
結果、肝炎ウイルス保菌者の8割以上が、65歳以上の高齢者であるのもうなずけます。
どんな種類の予防注射でも、そして輸血でも、本当に徹底的に滅菌して、用心深く実施すべきです。
私が大学を卒業して、歯科医になり、治療を始めた当座、先ず手洗いを徹底的に、それもしつこいくらいの訓練を、大学病院で受けました。
当時は、治療用グローブはまだ量産されてなかったので、普段はグローブ無しで治療をしていた為に、患者さん毎に神経質になるぐらい、手洗いを徹底していたのです。
肝炎ウイルスは直接、血液に触れなければ先ず感染しません。
現在は、患者さんも、ドクターも、手指や道具の徹底的な滅菌のお陰で、安心して治療を任せたり、施したりすることが出来ると云うわけですね。