院長の独り言 374 ; コッペパン、ガブリの頃

戦争に負けたことにより、食べ物では、本当に辛い思いをしました…。
敗戦後しばらく経ってから、お米の代替として(材料は今となっては作ったお袋が亡くなっているのですから分かりませんが)、丸く膨らんだパン擬(もど)きの食べ物を『パン』だと言って、昼ご飯に出されたのが、生まれて初めてパンと云う名前の食べ物を口にした瞬間です。
今から思うと炭水化物の塊のようなものでした。
その後1年以上経って、現在、パン屋さんで売っているような、小麦粉で出来た本物のパンを食べました。
勿論、今のように、洗練されたパンではなかったのですが…。
ただ、今でも鮮明に覚えています。
それは、『コッペパン』です。
紡錘状の形をしていて、指で押すと柔らかく、現在のコッペパンより長く、細い感じでした。
お袋が作ってくれていた炭水化物の塊、パン擬きが、正真正銘、パンだと思っていたので、パンを全く、好きになれませんでした。
しかし、お袋には悪いのですが、コッペパンは本当に美味しく感じたのです。
自分としては、それ以来、パンと言えばコッペパンでした。
その後、食パンや三角錐の形をしたチョコレートパン、揚げたパンなど色々な種類のパンがお店に並びましたが、私にとってのパンと言えば、やっぱりコッペパンなのです。
小学生の頃は、コッペパンに半分に切り込みを入れて貰い、その溝にイチゴジャムを流し、ガブッと食べるのが最高でした!
ところが、あんなに好きだったコッペパンを全くと言っていいほど食べなくなってしまいました。
大学生になった頃から、好きな食べ物と嫌いな食べ物が変化してきたのです。
どちらかと云うと高校生の頃までは甘い物が大好物でした。
それが二十歳を境に、辛いものや苦い物が好きになってきたのです。
きっと、酒を飲み、タバコを吸いだしたからでしょうか。
中学生の頃、ふざけて親父の飲んでいるビールを一寸舐めて、こんなにがい飲み物を親父が嬉しそうに飲んでいるのを、全く理解出来なかったし、不思議でした。
ところが、私も今は大好物です。ビールが!
そして時は経ち、この頃、無性にコッペパンが食べたくなってきたのです。
イチゴジャムをたっぷり挟(はさ)んだ、あのコッペパンです。
今は、パンの種類も多すぎて、時代背景と合わせて、記憶に残るようなパンは無くなりましたね。
飽食、ここに極まれリ…
320x320_rect_13359396

Leave a Reply

You must be logged in to post a comment.