院長の独り言 344 ; サヨナラ、O君
先日、丁度、学校帰りの小学生の一団に遭遇したのです。
みんな仲良さそうに大きな声で雑談しながらの下校です。
その小学生達を見ていたら、随分、昔の小学校時代が走馬灯のように頭をよぎったのでした…。
小学校3年から5年生まで、同じクラスで本当に仲良くしていた友人がいました。
所謂、親友と云うやつです。
親友のO君は、ある日、突然、千葉から転校して来ました。
丁度、自分の席の隣が空席になっていたので、その席に彼が座ったのです。
直ぐに二人は仲好くなり、勉強するのも、遊ぶのも、いつも一緒。
家が比較的に近かったので、小学校に登校するのも時間を合わせて行きました。
クラスのみんなも、われわれがあまりに仲が良いので、好奇の目で見ていたのです。
一緒にいるだけで、別に話すわけでもないのですが、お互いに離れていると落ち着かなかったのです。
約2年間、本当に何処へ行くにも一緒、遊ぶのも常につるんで行動していました。
別れは、ある日突然訪れました…。
その理由は自分にあったのです。
親父が急に転勤になり、引っ越しすることになったのです。
日曜日の夕飯の時、親父が家族みんなに『仕事の都合で引っ越しをしなければならない!』と告げたのです。
我々兄弟はビックリしてしまいました。
慣れ親しんだ学校を去らなければならないので、兄弟全員シュンとして元気を無くしてしまったのです。
友達は勿論、先生も、校舎も、近所のお兄さんお姉さん、そして駄菓子屋さんなどなど、多くと『さよなら』です。
自分にとっては、親友のO君と別れるのが本当に辛かったのでした。
何とか自分だけ引っ越ししない方法がないものかと心から思ったものです。
勿論、そんな事が出来る筈も無く、『いつかまた会おう!』と固い約束をして引っ越したのでした。
しかし人間は薄情なもので(あるいは私だけが薄情なのか…)、いつしかO君を思い出すことも無くなってしまったのです。
とくに中学生になってからは、O君は忘却の彼方になりました。
皆さんも経験しているように、中学生になると、小学校の時とあらゆる点で環境も違ってきますし、身体も子供から脱却していきます。
自分はバスケットクラブに入部し、クラブ活動にのめり込んだ事もあって、完全にO君の事は忘れてしまいました。
大学生になった時、昔、小学生の頃住んでいた家の近くに用事があったので、帰りに例のO君の家の前に行って見ました。
住人はO君家族ではなく、全く別の家族が住んでいました。
近所の人をつかまえて話を聞くと、その家には、もういくつもの家族が変わって住んでいるそうです。
O君家族が何処に引っ越してしまったか定かではありませんでした。
20歳を超えたO君に是非、会いたかったのですが、願いは叶いませんでした。
『残念だ…』と、その時は思ったのですが、自宅に帰って考えてみると、会わなくてお互い良かったような気もしたのです。
小学校の2人の親友時代は、オブラートに包んで、そっと心の奥深くしまい込んでおいた方が良かった気がしたからです。
いま思い出すのは、屈託のないO君の笑顔だけです。