院長の独り言 310 ; 消費税の増税に不安な理由(その1)
小学校に入った時から現在まで、『我が国は貿易立国である』と、耳にタコが出来るほど、学校でも、新聞でも、ラジオでも、テレビでも、あらゆるところで何度も聞かされています。
世界各国に工業製品を沢山、輸出しなければ、日本国も消滅するし、国民も生きて行けないと言われ続けてきました。
いわゆる外需頼みです。
現在でも、本当なのでしょうか。
我が国は、GDP(国民総生産)で、輸出の占めるパーセンテージは、1割程度です。
GDPとは、国民全員が1年間で稼いだお金の総額です。
その総額の中で、輸出で稼いだお金が、日本は1割だと云う事です。
あとの9割は、内需で生み出したものなのです。
ちなみに、各国の輸出依存度(2009年度)は、
中国はGDPの24.5%、
ドイツは33.6%、
韓国は43.4%、
そして、日本は11.4%です。
現在、欧州金融危機により、ユーロ安になっています。
結果として、良質なドイツ製品が、安く手に入ります。
ドイツはユーロが安いので、ユーロ圏では輸出額、一人勝ち状態です。
確かに、日本の輸出が減少すれば、国民生活は、ある程度の影響を受けるでしょう。
しかし、日本の優秀な製品は、世界中で大変に高い評価を受けています。
我が国の素晴らしい製品を、世界中の人々が購入したいので、円の価値が評価されていると云う面もあるのです。
ただ、『安全パイ』としての金融事情だけで、円が上がっているとは限りません。
日本の製品に魅力が無かったら、悔しくても、円高には振れないでしょう。
冷静に考えてGDPからみれば理解出来ますが、日本は貿易額が今より少なくなっても、上記の国々より国民生活に影響を受けないのです。
『輸出を増やせ!』などと叫んで、外需を増大する事が、本当に賢明なのでしょうか。
あまり知られていませんが(国民性が慎ましいので)、我が国は、世界最大の個人貯蓄大国です。
何だか、国の借金が世界一多いと言って騒いでいますが、例えれば、息子(国家)が親父(国民)にお金を借りているようなものなのです。
債務国と言っても、内輪の話です。
国内の富の蓄積は多く、世界の国々にお金を貸しています。
日本は世界一の債権国(外国にお金を貸している国)なのです。
要するに、もっと内需を増やすように努力するのが、大切と云う事です。
遠くは江戸時代、明治、大正、昭和、高度成長期…と、先人たちの努力によって、世界一の債権国になったのです。
現在のような世界的な不況下において、日本のように強い国はないのです。
われわれ国民の特性を生かして、真面目に、丈夫でデザインの良い製品を作れば、自ずと道は開かれてくるのではないでしょうか。
外需産業ばかりに頼らないで、少子高齢化の国の、身の丈に合った内需産業を充実化する方策もあるのです。
内需にブレーキをかける消費税の増税には、不安を感じます。
(次回に続く)