院長の独り言 195 ; 万馬券を当てる
東京医科歯科大学歯学部での医局時代、競馬の大好きな同僚がいて、土曜日になると決まって競馬新聞を読んでいました。
私はダービーだとか、天皇賞ぐらいの大きなG1レースでは、馬券を買った事はありましたが、ホンのお遊び程度でした。
たまにお付き合い程度で馬券を買うのみなので、買う時はいつも大穴を狙いで当たった試しがありませんでした。
勿論、競馬新聞を買う事もなく、自分のヤマカンを頼るのみです。
ところがある時、日本ダービーか、天皇賞か、菊花賞か、今となってはスッカリ忘れてしまいましたが、大きなレースでの話です。
仕事が終わり、医局員みんなでお茶を飲みながら談笑していた時、『明日のメインレースの馬券を買いたい人がいたら、ついでに買って来てあげるよ!』と競馬好きの例の同僚が言ったのです。
何人かの医局員はスポーツ新聞を読みながら、3−5だとか2−7だとか頼んでいました。
私も誘われたので、何も分からずに1−8(いちかばちか)の語呂合わせで、200円買ったのです。
例によって、大穴狙いです。
滅多に馬券など買わないので、たまに買うのに本命なんか買っても、面白くも何ともありません。
それに少しの馬券しか買わないので、なおさら穴狙いになるのです。
その時も、確か逃げ馬の先走りと評されていた、人気の殆どない馬を絡めて買ったのです。
日曜日の昼下がり、馬券を買ったレースを家内とテレビ観戦していると、レースが始まった途端、この逃げ馬は、逃げる事、逃げる事。
アッという間にトップに立ち、大逃げをはじめたのです。
馬の名前は、パッシングゴールド。
たちまち後続馬を10馬身以上、引き離してしまいました。
普通のレースだと、中盤になる頃には後続に追いつかれてしまい、尻つぼみでペケと云うのがお決まりの経過です。
ところが、この逃げ馬の、なお頑張る事、頑張る事。
他の馬もなかなか抜かせないのです。
まさかの展開に、二人で『頑張れ、頑張れ!!』の大声援。
この逃げ馬、パッシングゴールドは、ビックリですが、トップを保ったままゴールを駆け抜けてしまったのです。
本当の話ですよ!
おまけに、2番の馬も当ててしまいました。
医局の皆は、私が万馬券を当てた事を勿論、知っていたので、笑って祝福し、また『みんなに奢っては駄目だよ』と忠告してくれました。
結果、せしめた大金は、女房のコートに化けたのでした。