院長の独り言 186 ; 大学院時代のアルバイト先

歯科医師国家試験を受験し歯学部を卒業後、更に私は勉強が好きですから(冗談ですよ)大学院に進学し、博士号の取得を目指したのです。
6月に歯科医師免許が、厚生省から無事に送られて来ました。
その後、NHKの歯科診療室のアルバイトが決まりました。
NHK 放送センターが渋谷の丘に建設されたばかりで、歯科の診療室は確か4階にあったと記憶しています。
患者さんは勿論、主にNHKの職員でしたが、番組に出演しているタレントさんもたまに治療に来ていました。
私はタレントさんの名前をよく知りませんでしたが、テレビによく出演している人も受診しました。
NHKには大きな食堂があり、お昼時にはわれわれ診療室のメンバーも当然、その食堂に行って、天ぷらうどんやカツカレーなど日替わりメニューの中から自分の好きな物を選んで食べていました。
番組に出ているタレントさんたちも、職員と一緒の昼食を食べに来ていたのです。
そう云えば、隣のテーブルで植木等さんと黒柳徹子さんが、談笑していましたっけ。
黒柳さんが一方的に喋りまくり、植木さんがニヤニヤしながら相槌を打っていたのが、印象的でした。
タレントさんが食事に来ている風景は日常茶飯事なので、周りで食事を摂っている職員の方たちは、タレントさんに全く興味が無いようでした。
近代的な食堂で、時代劇に出演している俳優さんがチョンマゲ姿で、パスタやカツ丼を食べている姿に時代錯誤を感じて、妙な気分になったのを思い出します。
ある日、エレベーターを待っていた時です。
かつて一世を風靡した、朝の連続ドラマ『お花はん』に出演していた樫山文江さんが、あのお花はんの特徴である真丸い笑顔で、私の傍らをニコニコと通り過ぎて行きました。
またある時は、若くてハンサムな石坂浩二さんが何人かの出演者と談笑していました。
NHKの歯科診療室には丁度、一年間、アルバイトとして勤務した事になります。
一年間と云う短い期間でしたが、色々と面白い体験が出来たのです。
大学院に在籍していた時は教室の都合で、アルバイト先が色々と変わりました。
2年生の時は東京駅八重洲口にあった日本興業銀行(今は銀行同士の合併で存在していません)の歯科診療室でしたし、3年生の時は日本橋の伊藤忠商事の歯科診療室がアルバイト先でした。
友達のI君は、国鉄(現在のJR)の歯科診療所にアルバイトに行っていましたが、全国の何処へ行くのも、特急でも普通でも全て無料と云うパス券を貰っていて、医局員みんなから羨ましがられていたのです。
あの当時は日本全体が右肩上がりで、工業も商業もドンドン成長していたので、当時の医局員のアルバイト先は、今の若い医局員からみれば本当に信じられないほどに恵まれていたと思います。
先日も、かつての歯科保存教室医局員4人組で、当時の研究室時代の思い出を語り合ったのでした。
バイトの話はさて置いて、当時の先輩先生方の消息が一番の話題になります。
もう亡くなられた先生や廃業してしまった先生と、寂しい話が多いので気持ちも沈んでしまいます。
小生も医局で仲の良かった先輩先生方と、年賀状だけのお付き合いになってしまい、本当に寂しい限りです。
青春時代を過ごした昔の医局の思い出話に花を咲かせた後、話の締めは常に決まっていて、自然とインプラントや歯周病などの歯科治療に関する話になるのがオチです。
ここでやっと、何時もの4人の元気な話になるのです。
やはり我々は、根っからの歯医者と云う事です。

Leave a Reply

You must be logged in to post a comment.