信頼の喪失について

週明けの新聞を開くと、いつも目に付くのが『支持率』という言葉です。今朝も、世論調査の結果、現政権の支持率低下が記載されていました。

私には、このように頻繁に世論にお伺いを立てる必要性が理解できません。

しかし、政治においてだけでなく、あらゆる分野において世論調査が、日々行われています。勿論、医療についての世論調査も、多種行われています。

インターネット上で検索すると、歯科においては歯科医師過剰に対する世論調査が出ていたりしますが、医療全般においては医療崩壊に対する世論調査が多く為されているようです。

『全く、世論調査が役に立っていないのか?』と言われれば、そうとは言い切れないのだけれど、何か引っかかるのです。

例えば、諸問題の専門家が日頃の研究の成果をまとめて、問題点とその解決法を提示してくれれば良いのに…、と思うのです。『専門家が信頼できないから』と反論されるかも知れませんが、もう少し専門家の意見に頼って良いのではないかと。

歯科においても、セカンドオピニオン全盛の時代です。確かに、医師も患者さまも人間同士、相性が合わない場合もあるのでしょうが、深刻な医療不信が背景に存在しているのだと感じます。

あらゆる権威に対しての信頼が失われてきている昨今でしょうが、社会全体を覆っている、この不信感の連鎖は、日本社会の活力を低下させているのではないでしょうか。

医療においても不信感の裏返しか、何事も統計のデータを基盤する医療が、Evidence-Based Medicine(EBM;根拠のある医療)と盛んにもてはやされて、医療を提供する側も統計結果に頼りすぎてしまう。私も医療統計を研究に用いてきたので、その重要さは身に沁みて感じていますが、実際に患者さまに数字ばかり並べても、非常に味気ない、素っ気のない関係になってしまうでしょう。しかも、データの用い方を誤ってしまうと、医療への不信感を助長してしまう危険性をはらんでいます。

その延長線上に、Narrative Based Medicine(NBM;物語と対話に基づいた医療)という考えが提唱されています。キチンと食後に歯を磨けば、虫歯にも歯周病にもなりにくくなるのは、今や、患者さま皆さんが知っている常識です。ただし、正しい歯磨きを実行して頂くのは、大変難しいことです。単純に歯磨きを強く指示するのではなく、患者さま一人ひとりの個性に合う方法を見つけるのが、歯科医院の力なのでしょうし、信頼なのでしょう。

一番大事なのは、人と人との信頼なのです。

リストラや派遣切りといった、非常に残酷な言葉が、社会の信頼を切り裂かないようにと思うばかりです。

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