院長の独り言 164 ; かつて自転車の時代があった
最近はほとんど乗りませんが、小生も勿論、自転車に乗る事は出来ます。
現在、若い人達は何十万円もする(一台で何十万円もするのですよ!!)カッコの良い輸入物の自転車に乗っているのも珍しく有りませんし、お母さん達も買い物に下駄替わりに、自転車を使っています。
近場での、ちょっとした用事を済ませる為の交通手段としては、こんな手軽で便利な代物は他には無いでしょう。
何処の駅前でも、スーパーの前でも、そう云った理由で自転車が一杯です。
また昔話になりますが、小生が小学校の低学年であった昭和20年代前半は、街中で自転車を殆ど見かけませんでした。
たまに見る自転車は八百屋さんや大工さんなどの業務用で、それも機能一辺倒で、ごく格好の悪い物でした。
一般の家庭で自転車を持っていることは殆どありませんでした。
勿論、その当時、私の実家にも自転車は有りません。
しかし、われわれ悪ガキ達は結構、上手に自転車に乗る事が出来ていたのです。
それでは如何して、その頃の小学生や中学生は自転車に乗れる様になったのでしょうか。
今は全く見られる事が無くなりましたが、皆さん信じられないでしょうが、驚く事に子供達相手に『貸し自転屋さん』が有ったのです。
今時、自転車を貸してくれるのは、観光地やリゾート地以外は見られません。
各家庭、自転車は所有している訳ですから。
当時は、私の家もそうでしたが、殆どの家庭では自転車ですら買う余裕なんか無かったのです。
子供の着る服も、今では恥ずかしくて、とても着る事が出来ない様な、お古でツギハギのある、兄の『お下がり』を貰って着ていたほどです。
しかし、お袋が夜鍋仕事で、ほころんだ箇所を、背中を丸めて繕っている姿を見ていたので、文句はとても言えなかったし、周りの友達も同じ様なもの着ていたので、たいして苦にも成らなかったのです。
ただ、たまに兄貴だけが新品の服を着ているのを見ると羨ましく思ったものです。
大きくなって兄弟が実家に集まり、その話が出ると、お袋は『わざと早目に弟達にまわしていた!』と真面目な顔をして、弟達に強調していました。
貸し自転車屋さんの話ですが、確か30分間5円で、子供用の自転車を借りる事が出来たのです。
蛇足ですが、その頃、駄菓子屋さんではおやつのおでんが3つで5円でした。
小生のお小遣いは10円だったのです。
おでんを食べたくても止めて、10円で一時間自転車を借りたものです。
一時期、自転車に乗るのが面白くて、学校から帰ると、近所の仲の良い友達数人と一緒に貸し自転屋さんに行って、少しでも状態の良い自転車を争って借りたのでした。
何故、親達も子供に気安く、子供だけの危険な自転車遊びを気軽に許していたのでしょうか。
今の感覚で考えれば、子供達だけの自転車遊びは非常に危険に思えるでしょうが、当時は、殆ど自動車は走っていなかったのです。
道路で野球の三角ベースも堂々と出来たくらいガラガラで、先ず交通事故など起こる事が無かったのです。
お互い、転んだり、ぶつかったりしましたが、却ってその天真爛漫さが、自転車運転が早く急激な上達に繋がったのでしょう。
今は、一家で一台、あるいは一人一台の自動車の世の中ですが、自転車も相変わらず人気が有ります。
しかし、私の小さかった頃とは、比べ物にならない位、道路は危険が一杯。
小学生を持つ親御さんは、子供を一人で自転車には乗せられないでしょう。
小学生は、あの頃の方が、自転車の操縦はズッと上手かったかも知れませんね。
街中を歩いていると、意外に80歳以上のお年寄りが上手に、軽やかに自転車に乗っている風景が見られますが、皆さん、小さい時から自転車には乗り馴れているのです。