院長の独り言 138 ; 加齢と脳の老化は違う
小生は、老化には本当の老化(真性老化)と偽(にせ)の老化が有ると思います。
前者は、認知症など脳の老化と定義します。
後者は、主に目、歯、耳など、脳以外の身体全体の衰えの事だと思ってください。
歯学部大学一年生の時に、解剖学実習で学習したのですが、不慮の事故で亡くなった20歳の青年の脳は、丁度、例えるならアワビのように硬く締まっていてシコシコした感じでした。
ところが70歳程の老人で、生前、認知症を患っていた方の大脳皮質は『脳軟化』と云われるとおり、まるで豆腐のようでした。
若い脳と認知症の老人の脳のあまりの違いに、若い小生たちは、それはそれは強い、強いショックを受けました…。
要するに脳の老化、所謂、真性老化は回復不能と云う事です。
その点、偽の老化の代表である目、歯、耳の衰えは、医療技術の発達した昨今、眼鏡、義歯、補聴器で、ある程度は回復可能です。
われわれ人間の寿命は昔と比べ物にならない程に延びて、現在は80歳を超えても、若者に遜色が無い程に、元気な人が珍しくない時代です。
所謂、偽の老化には個人差が有りますが、これは加齢と云う天然の掟です。
しかし、偽の老化は、寿命には全くと言って良い程、関係有りません。
昔から言われていますが、耳の遠くなった人は長生きすると言われるくらいですから…。
ある脳科学者によると、人間の脳の寿命は少なく見積もっても、150歳以上だそうです。
脳の寿命から考察すれば、100歳以下で亡くなってしまうのは、原因がどうであれ、はなはだ勿体ない話と云う事になる訳です。
『脳の寿命が尽きる』イコール『生命が尽きる』と云う事が究極の理想です。
その理想に向かって、我々は一生懸命に努力をすべきではないでしょうか。
その為には、普段から脳を活性化する事が大切ですが、その第一は本を読む事です。
脳を生き生きと保つには、本を読む事による効果は計り知れないものが有るとされています。
読書の効果は、随分前から言われ出していて、今や、認知症の予防に関与していると云う事が定説になっています。
次は、色々な人とおしゃべりを楽しむ事です。
要するに、なるべく外に出向いて、友人を作って、世間話に花を咲かせる事だと思うのです。
更にもう一つ、脳を活性化する一つの因子として、最近、脳科学者や歯周病学者から言われ出したのが、物を良く噛むと云う事です。
噛む事が、脳血流を増加させて、その活性化に効果を生む事が、最近の研究で明らかになってきたのです。
われわれ歯科医も一見、歯科とは関係ないようですが、認知症の予防に真剣に取り組まなければ、いけないのです。
ただ長生きするだけでは詰りません。
元気で、感受性良く物事を捉える事が出来て、毎日を心から楽しく生活しなければ、勿体ない気がします。
本を読む事、友人との会話を楽しむ事、そして良く噛んで食事をする事が、真性の老化を防ぐ最大の手段である事は確かなようです。