院長の独り言 408 ;一匹のイヌを愛した結果…
大学生の頃、オヤジの勤めの関係で、古い家でしたが、かなり大きな官舎に住んでいたことがありました。
2メートル程度の塀にグルリと囲まれた和風の邸宅です。
こんな大きな家に住んだのは、後にも、先にも、この一回きりです。
5~6年間住んで、その大邸宅からは引っ越しましたが、何しろ不用心なので、以前にも一度ブログに載せましたが、当時、秋田犬を飼っていました。
あのロシアのプーチン大統領が可愛いがっている犬と同じです。
いま思えば、本当に大型犬の秋田犬を飼っていて、正解でした。
その愛犬『フジ』が、空き巣を追っ払った事があったからです。
どうせ犬を飼うなら、可愛くて、扱い易い、もっと小さな犬を飼うベキだと、親は主張していたのです。
大きな秋田犬は餌代もかかるし、扱いも大変だと言って、大反対だった両親は、空き巣を追っ払ったその日から、『フジ!フジ!』と言って、たいへん可愛がるようになりました。
フジとは、その大きな秋田犬の名前です。
フジは、家族には気を許していましたが、他の人には決して慣れませんでした。
別に吠え付いたり、襲ったりはしませんでしたが、家族以外の人にはシッポを振ったりして、愛嬌をふりまく事は決して無かったのです。
我々には当然ですが、シッポがちぎれるんじゃないかと思う程、振っていました。
本当に可愛いヤツでした…。
唯一、大変だった事は、朝晩2回の散歩です。
朝は午前4時、夜は午後8時、と決まっていました。
散歩は、当時、大学生だった私の仕事のようなものでした。
気候の良い春秋は微風が心地よく、夏は走って、汗をかくのも気持ちがいいものでした。
しかし、冬の午前4時の散歩にはまいりました。
散歩の時間になると、フジは必ず要求してくるのです…。
たまに、低い声で吠えるのは、近所の人達も『凄いね!』と感心しているのですが、ワンワンと連続して吠えると、当然ながら五月蝿(うるさい)ので『何とかしてくれ!!』となります。
寒い寒い日などは拷問みたいなものです。
内心『散歩に行きたくないな…』と思いますが、自分しかフジを連れ出す家族の者はいません。
フジの散歩のお陰かどうかでわかりませんが、全く風邪をひかなかったのは、家族で私一人でした。
それから風邪をひかない体質になったので、現在、診療所のスタッフ全員に『院長先生の風邪をひいた姿を見たことがない』と不思議がられているのです。
しかし、フジが死んでからは、犬を飼う気が全く失せてしまったのも、事実です。
一時、気違いみたいに、あんなに犬の専門書を読み漁って、みんなから『犬博士』と言われていたのに!!
あまりにフジに気を入れ過ぎて、気が抜けてしまったのです。
今でも散歩している犬を見るのは大好きですが、自分で飼おうとは全く思いません。
この心の変化はどうしてでしょうか?
これがイヌを愛した結果なのです…