院長の独り言 322 ; 聴覚語ではない日本語

日本人は、外国語を喋るのが苦手です。
その一番の理由は、日本語が視覚から入る言語からだと言われています。
英語をはじめ仏語、独語などは聴覚語です。
文字に意味はありません。
耳から言葉を覚えます。
勿論、日本語も最初は耳からですが、直ぐに、目から言葉の意味を覚えるようになります。
皆さん意外でしょうが、中国語も聴覚語です。
簡略漢字を簡単に創ってしまい、漢字本来の意味が解らなくなってしまっても、中国の人は、何ら不自然に感じないのは、中国語が聴覚語だからです。
本来の漢字の意味をシッカリ受け継いでいるのは、皮肉にも中国人ではなくて日本人です。
漢字に意味を認めていたので、中国語には無い『峠』など、日本で生まれた漢字は結構、あります。
中国人をはじめ、言葉が聴覚語である国(世界中のほとんどの国)の人は、日本人と違って外国語を簡単にマスターしてしまいます。
外国語を耳から覚えるのに馴れているのです。
我々は、いちいち意味を確かめてしまうので、外国語を喋るのが世界で一番、苦手な国民と云う訳です。
もし我が子に、外国語を流暢に喋らさせたかったら、文字を覚えないうちに、英語でも、中国語でも、耳からの学習法をすべきです。
何でこんな話をしだしたかと言いますと、先日、『北京故宮博物院200選』を観に行った時に、長文の漢詩の中に『平仮名』が混じっていた事に興味を感じたからです。
平仮名は、日本で発明された文字です。
奈良時代に、律令国家になった我が国は、文字を書く機会が大幅に増えたので、何とか漢字を簡略化したいと痛切に感じたのです。
しかし、漢字を簡略化したくはなかったのでしょう。
そこで、現在の国会の速記のように、速記しやすい平仮名を完成させていった説が、現在、有力です。
あくまで俗説ですが、柿本人麻呂や空海が平仮名を創ったとも云われています。
漢字を簡略化せずに、大切に残した先人たちは、大したものです。
漢字、平仮名のお蔭で、その後、平安、鎌倉、室町、安土桃山、江戸、明治、大正、昭和、そして平成と、文字の文化が発展してきました。
おまけに、日本人はカタカナも発明していますが、これも、外来語のふり仮名には無くてはならない文字です。
また、日本語の文章には、言葉と言葉をつなぐ『は』や『を』のような助詞が欠かせません。
この事も、世界で珍しい視覚語を発達させた要因のようです。
しかし最近は、文字離れ、読書離れが甚だしく、嘆かわしく思います。
日本語は、世界で珍しい視覚語です。
日本語は読書の為にあるような言語ですから、たくさんの本を読もうではありませんか。
欲を言えば、グローバリゼーションの昨今、努力を重ねて、外国語もペラペラいきたいものですがね。

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