院長の独り言 289 ; 『サメの歯が羨ましい!』と訴える患者さん
歯周病で治療中の患者さんと歯の大切さについて雑談中。
患者さん曰く
『何度も歯が生えてくるサメは、実に羨ましい。
サメのように何度も歯が生え変われば、私もこんなに苦労しないのに…。
もっと若いうちから歯を大切にしておくべきだった』
と、グラグラになってきた歯を嘆きます。
サメの歯は、この患者さんが羨ましがるように、一生涯に何度も生え変わります。
一匹のサメが、一生で生え変わる歯の数は何千本を軽く超えると言われています。
サメのアゴには、何列もの歯列が存在していて、その歯列に沢山の歯が並んでいます。
獲物を襲った際に、最前列に生えている歯列の、一本の歯でも損傷してしまうと、歯列ごと、その後ろに控えている歯列と交換してしまうのです。
その結果、サメが一生涯に生え代わる歯は、膨大な数になってしまい、何千本以上も生え変わるとされています。
まるでオートマチィックの部品交換のようです。
サメの歯はなぜ、このような構造になっているのでしょうか。
実は、サメの歯の由来を考えてみると、歯が何度も生え変わる事は、一つも羨ましくないのです。
サメの歯は、鱗(うろこ)が変化したものなのです。
われわれ人間の歯は、アゴ骨の中に入っているので丈夫です。
お陰で、硬い物でも噛み砕く事が可能です。
ところが、サメの歯は、皮膚の変化した鱗に由来しているのですから、あんな獰猛(どうもう)で、海の王者に見えるサメは、見た目とは似ても似つかないほど、その歯は脆(もろ)いのです。
人間の歯の歯根に相当する部位が、サメの歯には、全く無いのです。
サメの立場からすれば、一生に二度しか歯が生え変わらない人間の歯の方が、よほど羨ましいと思うのではないでしょうか。
サメは硬い物はおろか、殆どの獲物を咬み砕けないからです。
鋭い歯で獲物を捕獲したサメは、ほ乳類のライオンのようにバリバリと噛み砕いて咀嚼出来ず、丸呑み状態なのです。
獲物を捕獲する度に、直ぐ歯を痛めてしまい、交換しなければ生きていけないのです。
サメを羨ましいなどと、努々(ゆめゆめ)思わない事です。
かれらは、獲った獲物をゆっくり味わいながら食べる事が不可能な、可哀想な生き物なのです。
人間は、歯の管理を入念にすれば、一生、硬い物でも、何でも噛み砕いて、食事を楽しめるのです。
われわれ石川歯科のスタッフ一同は、患者さんが毎日、美味しく食事が出来るように、ささやかながら、そのお手伝いをさせて貰っています。
歯の事で、何かお悩みがあったら、是非、ご相談下さいね。