院長の独り言 434 ;斜め読み

中学生から高校生の頃、作者、和洋、内容などを問わず、何しろ色々な分野の本を沢山読んで、知識を頭に詰め込んでやろうと思いました。

どのような方法で本を読むと、短い時間で沢山の本を読破出来るか、色々な方法を試していた時期がありました。

昔から本を『斜め読み』すると、早いスピードで、文章を大量に読む事が出来ると言われています。

自分としては、実験するつもりで、目を大きく見開いて、1ページ目の右上から全ページを睨み付けた後、普通、本を読む時のように、目線を真下に持っては行かずに、左斜めの下の方向に字を追っていったのです。

目は見開いて、全体のページを見るようにしました。

最初は、全体の字が、ぼやっとして、目も涙目、頭の中も混乱、文の内容もしっかりとは把握が出来ませんでした。

ところが、十日ばかり我慢して必死に『斜め読み』を続けていると、驚く事にだんだんと内容も掴めるようになり、そして、何と言っても、普通の読み方よりも、4倍も5倍も早く読めるようになったのです。

『やったぜ!』

同じ読書時間で、人の何倍も本が読める優越感はたまりません。

しかし、大学に入り、友達と麻雀や囲碁、そして、大学院に行き、研究で忙しく、開業してからは、有り難い事に、毎日多くの患者さんを診させていただき、言い訳にはなりますが、読書する時間がドンドン少なくなってしまいました。

少なくなっただけでは無く、『斜め読み』の弊害が出てくるとは本当に驚いています。

『斜め読み』をしていたので、内容を読み取らずに、ただ早く読む習慣が着いてしまい、熟読しなかったので、本来の『文』の面白みを捨ててしまったのです。

結果、読書がつまらなくなってしまい、本を読まなくなってしまいました。

おまけに、『斜め読み』した頃の本の内容を、殆ど忘れてしまっているのです。

つくづく本はユックリと読み、よく内容を理解しながら先に進まなければ自分の身に付かないと云う事を思い知らされてしまいました。

今となって、『斜め読み』していた時間が全く無駄だった事を心から後悔しています。

『斜め読み』していたより前に、ジックリ読書していた宇宙の本とか、明治、大正の頃の文豪文学小説は、70歳を超えた今でも内容をシッカリ記憶しているのです。

ボケ防止の為と、本を読む楽しさを思い出して、これからは一字一句を大切に読書したいと思っている今日この頃です。