院長の独り言 287 ; かつて所属していた、大学の研究室の勉強会に出席しました
先日、自分が教員をしていた、大学の研究室(歯内療法)の勉強会に行ってきました。
最近の歯内治療(歯髄の治療)や現在、教室の若手が研究しているテーマについて、丁寧に報告してくれます。
新しい治療方法の勉強の為に、余程の用事がない限り、年2回、必ず出席しています。
最新の治療法や研究は、専門の雑誌を読めば、ある程度、把握できる事は分かっています。
しかし、最先端の研究をしている大学の研究室に行って、教授、助教授、講師、助教、そして大学院生や医員の若手から、直接、話を聞くのは、本当に大切です。
なぜなら、後輩が頑張って、研究に取り組んでいる姿は、かつての自分を見ているようで、もうひと踏ん張りしなければと、『ハッパ(発破)』を掛けられるからです。
私のように大学を退職して40年間も経過してしまった者にとって、西多摩から御茶ノ水まで出て、勉強会に参加するのは、正直、億劫です。
事実、今回の勉強会に出席していた多くの先生方の中で、70歳を超えている年寄りは、ほんの数名でした…。
しかし、現役の若い教室員を見ると、勉強会に出る意欲が湧いてくると云うものです。
また、かつての同僚たちに会うのも、楽しみです。
最初の講演は、口腔外科の講師の先生でした。
『口腔の粘膜病変にも、色々と種類があります。
歯肉炎のような、日常臨床で毎日、診られるものから、口腔癌のように、命に関わる重篤なものまで、色々な病変が診られます。
ハッキリと分かるような、特徴的な症状を呈している場合は、その診断は誰でも容易に出来ます。
しかし、歯肉炎だか、口内炎なのか、良性腫瘍なのか、そして悪性の癌なのか、診断を確定出来ない、境界線の症例も沢山あるのです。
特に、初期の場合は、見分ける事が大変、難しいものです。
癌のような命にかかわる病気の場合、初期に発見されれば、完治出来るのに、見過ごしてしまうと進行してしまい、大変な事になります。
かなり病気が進行している場合は、確定診断は比較的に容易です。
初期の状態で、どのように診断したら良いのかが、肝心です。』
と、スライドなどを参考に、分かりやすく講義してくれました。
次は、大学院生がいま現在、一生懸命に研究している、OCT(光干渉断層計)を用いて、簡便に、歯の破折を診断する方法を話してくれました。
その他、コンビームCT(歯科用CT)についての研究が2つ。
根管洗浄(感染した歯髄を、除去した後の洗浄)についての研究が3つ。
全て、歯の保存の限界を探る講演でした。
特に、歯の破折は、日常の臨床でも、かなり見受けられます。
この歯の破折は、歯肉が腫れたり、膿が出ている場合は、容易に対処出来ます。
ところが、2次元のレントゲン写真では一見、何の異常が診られないのに、患者さんが『食事の時、痛い感じがして、噛みにくい…』とか、『水が少し沁みる…』などといった、ちょっとした違和感を訴えて、来院する事があります。
こういう時に大活躍するのが、3次元であるコンビームCT(歯科用CT)です。
石川歯科医院には、幸い、コンビームCTがあるので、痛みの原因が不可解な時には、大いにコンビームCTを利用しています。
勿論、歯の破折の診断を、明視化に出来ます。
この破折は、無髄歯(歯髄を除去した歯)に多いのです。
死んでしまった無髄歯は、非常に脆(もろ)くなってしまい、割れやすくなるのです。
特に、噛む力の強い男性に多く、歯の破折は見られます。
だから、私は出来るだけ、歯髄を取らない様にしています。
結局、勉強会は、7人の演者による講演があり、午後1時から夕方6時まで、5時間に及びました。
良い勉強になりました、正直、少し疲れましたけど…。