院長の独り言 223 ; 痩せた猫を思い出す
皆さんは犬派ですか?
それとも猫派ですか?
動物好きの人はきっと、『両方、大好き!』と言うでしょう。
人によっては、『猫は好かないけど、犬は好きだ』と言うでしょうし、その逆の人もいるかと思います。
何度か、以前のブログに書きましたが、小生の学生時代、自宅で秋田犬を飼っていたのは、既に報告済みです。
以前、秋田犬を飼っていたと云う事もあって、どちらかと云うと自分は犬派でした。
その秋田犬『ふじ』は、私に良く懐いていたので、余計に犬好きになってしまったのでしょう。
別に、猫が嫌いと言うわけではないのです。
自分の考えでは、少年の頃から、『犬イコール番犬』であり、大きくて、威圧感があり、しかも忠実そのもので、小生の親友となるなら、それは犬であると思い込んでいました。
そう云う大きくて、飼い主に忠実な犬を飼ってみたくて堪らなかったのです。
そこに、大型犬の秋田犬を飼ったものですから、猫は眼中に無かったと云う事です。
今は、小さくて愛らしい愛玩犬の方が、強面(こわもて)の番犬よりズーッと人気があるようです。
私が子供の頃は、愛玩犬などトンとお目にかかった事は無かったのです。
犬は番犬として飼われていたのが、一般的でした。
これも以前のブログに書いた事ですが、可愛がっていた『ふじ』が癌で2歳の時に突然、死んでしまい、おまけに大学院の時に、研究で動物実験をしなければならなくなり、その時に凄く嫌だったのですが、犬を止むを得ずに屠殺したので、その後は、犬を遠ざけていた事も確かです。
それ以来、動物は飼わないと決めていたのです。
ところがある日の朝、新聞をポストに取りに行った時、足元にヨロヨロと倒れ込んできた茶色の猫がいたのです。
その猫は痩せ細っていて、何日も食べ物を口にしていない事は明らかでした。
気の毒に思って、早速、鰹節入りのご飯を食べさせたところ、必死に食べた後、直ぐに姿を晦(くら)ましてしまいました。
それからその猫は、2日に1回程度、顔を見せて、その都度、与えた餌を食べ終わるとそそくさと何処かへ消えてしまうのです。
結局2年ほど、つかず離れずに、その猫はウチの周りを徘徊していましたが、馴れる事は決して無かったのです。
常にその猫は1メートル以上離れていて、それ以上、近寄る事は決してありませんでした。
1メートルより人が近付くと、サッと逃げ、こっちが引き下がるとまた近付いて来るのです…。
こんなに用心深い猫は、後にも先にも、この猫以外、見た事はありません。
結局、2年ほどで姿を見せなくなったので、何処かへ行ってしまったと思って、猫の事は忘れていました。
忘れた頃に、黒ブチと茶色の2匹の子猫を連れて、その猫が我が家に再び出現したのです。
ところが、その2匹の子猫を置きざりにして、直ぐ何処かにまた消えてしまいました。
それから、その猫は二度と姿を見ませんでした。
本当に不思議な猫でした。
2匹の子猫は、我が家の人間に良く懐きました。
痩せていた親猫とは違い、子猫たちは与えた餌を良く食べ、太りました。
今回、原発事故で飼い主がいなくなり、やせ細った犬や猫、牛などの家畜が、市道を彷徨い歩いていますが、小生は思わず、かつての痩せた親猫を思い出してしまいます。
泣く泣く住民の方々が去られた街中を、痩せた牛の群れが歩いて行く…。
その光景が目に焼き付いて、離れません。
彼らはどうなるのでしょうか?