院長の独り言 124 ; 蛍と線香花火の光

先日、かねてから予定していた新人歓迎会を兼ねた夏季打ち上げを、高尾山近くにある割烹料理店で催しました。

このところ、梅雨が明けたと云う事もあって、連日の猛暑が続いています。

この日も朝から大変な蒸し暑さで、スタッフ一同、頑張って一日の診療を無事終え、お店に向ったのです。

甲州街道を高尾山に向って行くのですが、いつもは混んでいる道が、この日は比較的に空いていて、20分程度で目的地に着く事が出来ました。

お店は山の裾野の緑に囲まれる様に創られていて、広い庭園があります。

立派な門をくぐると、まず綺麗に手入れの行き届いている古風な日本庭園を見る事が出来、思わずホッと心が和みます。

大きな錦鯉が沢山泳いでいる池に沿った小路を進み、まだ8月にも入らないのに、ヒグラシ蝉の涼しげな声のシャワーを浴びながら、一軒一軒が独立している和風の部屋の一つに案内されるのです。

畳の部屋に入ると、ガラス戸に囲まれており、どの席についても、外の庭を眺める事が出来ます。

景色が会席料理の引き立て役と云った寸法です。

全員が一日、良く働いた事も有り、お腹がペコペコで、シャンパンの乾杯もソコソコに、料理に舌鼓。

やはり人間は、美味しい料理を空腹時に食べる事が一番の幸せです…。

料理を頂きながら、ビールや冷酒を飲み、そして新しいスタッフの紹介です。

宴もいよいよ、たけなわになった頃、今宵のメインショーであるホタルの観賞会です。

料理の先付、前菜、吸い物、お造り、鮎の焼き物、和牛のほう葉焼と平らげた後に、午後8時、突然、全ての部屋の灯りが消されて、店全体が漆黒に支配されます。

全員、『あれっ?』と声を上げ、一瞬の静寂の後、縁側から小さな光があちこちで点滅しているのが見えたのです。

ガラス戸を開けて、皆で縁側に腰を下ろし、庭全体に散らばっている、静かな光の点を見つめます。

『あれホタルの光じゃない?』

『ホタルだよ!』と、歓声が上がります。

掌に止まって、点滅するホタルの光は実に神秘的で、幽玄な光景です…。

ものの本によると、我が国には約50種類のホタルが生息しているそうです。

世界では約2千種類のホタルがいるそうです。

有名な日本のホタルは源氏蛍と平家蛍ですが、この庭で見られるホタルは平家蛍でしょう。

大形の源氏ボタルに比べて、かなり小さ目なホタルです。

それでも幻想的に輝いている様は、日本の夏の風物詩の最たるものでしょう。

もう一つの出し物として、線香花火が用意されており、これも大変楽しいものでした。

三つ四つと線香花火をまとめて撚って、一つにして、器用に大きな花火の玉を作るスタッフもいます。

夏の花火は何と言っても線香花火が一番ですね。

むかしむかしの幼い頃が想い出され、感無量と云ったところでしょうか…。

ホタルと線香花火の上品な光の競演に、すっかりと心を洗われた宴もアッと云う間にお開きとなりました。

小生としては、スタッフの英気を養う事が出来たとすれば、嬉しい限りです。