院長の独り言 439 : お袋の思い出から

お袋は大正生まれ、23歳で私を生んで呉れています。

19歳で兄貴を生んでいます。

日本が軍国主義の真っ直中の昭和8年に結婚をして、4人の子供を無事に育て上げたのです。

その間、大空襲に合いましたが、何とか苦労をしながらも戦後を生き抜いてきました。

ところが、苦労したわりには何事にもオットリしていました。

オヤジが国家公務員でしたので、経済的に特別恵まれていた訳でもないのに、常に全ての事に対しておおらかでした。

私も若い時は、お袋のおおらかさに別に深くは考えなかったのですが、50歳を過ぎた頃から自分の生き方と比較したり、周りの人と比べると『あんなに大変な時代だったのに、随分おおらかにお袋が生きていた…』のが不思議に思うのです。

キット、何か秘密があるに違いないと思うようになったのです。

もし私が考えも及ばない理由があったら、これからの人生を生き抜いていく道具として、是非、参考にしたいと考えました。

色々、足りない頭で考えを巡らしていると、一つ考えられる事にブチ当たったのです!

それは、お袋の親が浄土真宗のお寺さんの住職夫婦だったという事でしょうか。

『浄土真宗』に何か秘密が隠されているのではないかと咄嗟に思いまいた。

親鸞が浄土宗の開祖法然に教えを受けた後に開いた『浄土真宗』とはどのような宗教なのか徹底的に専門書を読む事にしたのです。

その前に、母方の祖父が真宗の僧侶でしたので、試しに、お経の本を一冊借りてみました。

中身は、漢字だけの教典でした。

読めなくても、書いてある内容は漢字の意味から何となく少しは理解出来ました。

神田神保町の専門書店に行き、浄土真宗の内容を分かり易く解説している手引書買い込み、結構真剣に読みふけりました。

そこで分かったのは、我が国では大変珍しい宗教である事でした。

浄土真宗は、日本では唯一の他力本願が母体になっているのです。

我国の宗教は浄土真宗を除いて全て自力宗教です。

自力宗教と他力宗教どこが違うのでしょうか。

簡単に説明すると、自力宗教は本人自身が死ぬほど努力して、例えば、滝に死ぬほど打たれる修業したり、一ヶ月も絶食したりして自分自身鍛え上げて自らが仏になる宗教の事です。

一方、他力宗教は、いくら自ら努力しても自分は仏にはなることが出来ず、

仏に仕えて仏に救って貰い、生きて行く宗教です。

仏に仕えて生きて行く『浄土真宗』は、キリスト教と同じで、両方とも他力宗教です。

『浄土真宗』と『キリスト教』は、その点で似た宗教なのです。

他力宗教のいい所は、自分自身、謙虚に生きていく事が出来ると云うことではないでしょうか。

自分なりの結論として、自ずとお袋のようにおおらかに生きて行けると云うわけではないでしょうか。