院長の独り言 407 ;後輩の教授の退職パーティー

つい先日、医局の後輩である教授が退職しました。
そして祝賀会が都内の有名ホテルで盛大に挙行され、私も招待されたのです。
50年ほど前、私の恩師である東京医科歯科大学 鈴木賢策教授の退職祝賀会に比べると、今回の祝賀会はたいへん盛大なパーティでした。
今回の後輩の祝賀会には、大きな丸テーブルが20以上有り、私が座ったテーブルに一緒に座った先生達は全員、50年以上も前に同じ医局に在籍していた当時の仲間でした。
まるで40~50年前にタイムスリップしてしまったようで、懐かしいやら、嬉しいやら…。
全く楽しいひと時を過ごす事が出来たのでした。
顔を合わすのは、数十年ぶりの先生ばかりです。
『本当に久しぶり!』
『懐かしいね〜』
『もう生きて会えないと思っていたよ!』
大学では、研究をする厳しさ、学生を教える大切さ、そして患者さんを治療して疾患を治癒させる目的を目指して、古い講座に、古い道具を使って頑張っていました。
医局員全員で切磋琢磨していた遠い昔を思い出し、切なく感じてしまいました。
医局に在籍していた時、楽しい酒も飲みましたし、仕事の上で言い争いもしました。
テーブルに着いた全員の頭の中に、医局にいた頃の、苦楽を共にした思い出が、私と同じく、走馬灯のように巡っているのでしょう。
みんな、神妙な顔をしながら乾杯を重ねたのでした。
いま思い出しても、当時の研究室は決して綺麗とは言えません。
実験器具も古く、色々な薬が保管されている薬品棚も、我々の机も、アチコチヒビが入っている有様でした。
現在の研究室をたまに訪ねると、診療道具も、使用する薬品も、全て大きく異なり、驚くほどの進歩が見られます。
研究室も、診療室も、格段に明るく、たいへん清潔になっています。
われわれが在籍していた頃の研究室は、お世辞にも清潔とは言えませんが、もう一度医局員に戻れるなら、風が吹けば窓がガタガタ音を立てる、そして慌てて歩くとミシミシ蝉のように鳴く床、如何にも昔の映画に出てくるような古い研究室で、昔の仲間と勉強したいと思います。
それにしても退職してからあまりにも時間が過ぎてしまいました。
過去に戻る事は不可能です。
残念ですが、懐かしい顔を見ることで満足しましょう。
同級生の一人は、『もう生きては会えないな…』と、独り言のように呟きました。
いいや友よ!また再び杯を重ねようよ。
まるで李白のような気分になりました。

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