院長の独り言 454 : 私が漫画世代の走りだった

小さい頃は童話や伝記物、中高生の頃になってからは夏目漱石、森鴎外、島崎藤村、芥川龍之介などの、いわゆる日本の有名作家の小説を愛読していました。

大学生になると、当時の流行作家の中間小説を読む程度で、自分の専門以外の本を読まなくなり、もっぱら麻雀や囲碁などの趣味にうつつを抜かしていたのです。

ただ一貫して、漫画だけはたのしんでいました。

世間では漫画、漫画と馬鹿にしますが、現在は、国内は勿論ですが、世界中で日本の漫画は大勢の人に読まれていて大人気です。

中でも、私が大好きだったのは手塚治虫でした。

手塚治虫の作品は漫画と云うより、私とっては大袈裟ですが、哲学書のように常々感じていたのです。

難しい哲学書を見開いてもチンプンカンプンですが、手塚治虫の漫画は哲学書を彷彿(ほうふつ)させてくれます。

手塚治虫の長編マンガ、『火の鳥』しかり。

皆さん、『鉄腕アトム』のラストシーンを知っていますか?

大団円、ハッピーエンドで終わっているわけではありません。

悲劇的な最後です。

テレビで子供向けに放送していましたし、悪者をギャフンと云わせていた英雄のアトムですから、アトムは不死身と思いきや、悲しい結末にシュンとしている子供達も多かったと思います。

私が小さい頃は、マンガと言えば、『サザエさん』『のらくろ』などナンセンス漫画が主流でした。

ひとマス、ひとマスの動きもありません。

その内容はと云うと馬鹿馬鹿しくて、単純に笑えるものでした。

その動きのない従来のマンガと比較して、手塚治虫の漫画は動きが顕著で、物語性が抜群でした。

手塚漫画は子供が喜ぶマンガと言うより、大人向けの小説のようです。

漫画の概念を変えてしまいました。

勿論、ナンセンス漫画も面白いけれど、手塚漫画のような考えを深めさせてくれる作品も良いですね。

今、7~80年前の手塚漫画のような世界になりつつある地球を、あの世からニタニタ笑いながら『どうだ!』と、手塚治虫が鼻高々に笑っているような気がします。

人工知能なんていっぱい出てきたもんなぁ〜