* You are viewing the archive for 4月, 2014

院長の独り言 408 ;一匹のイヌを愛した結果…

大学生の頃、オヤジの勤めの関係で、古い家でしたが、かなり大きな官舎に住んでいたことがありました。
2メートル程度の塀にグルリと囲まれた和風の邸宅です。
こんな大きな家に住んだのは、後にも、先にも、この一回きりです。
5~6年間住んで、その大邸宅からは引っ越しましたが、何しろ不用心なので、以前にも一度ブログに載せましたが、当時、秋田犬を飼っていました。
あのロシアのプーチン大統領が可愛いがっている犬と同じです。
いま思えば、本当に大型犬の秋田犬を飼っていて、正解でした。
その愛犬『フジ』が、空き巣を追っ払った事があったからです。
どうせ犬を飼うなら、可愛くて、扱い易い、もっと小さな犬を飼うベキだと、親は主張していたのです。
大きな秋田犬は餌代もかかるし、扱いも大変だと言って、大反対だった両親は、空き巣を追っ払ったその日から、『フジ!フジ!』と言って、たいへん可愛がるようになりました。
フジとは、その大きな秋田犬の名前です。
フジは、家族には気を許していましたが、他の人には決して慣れませんでした。
別に吠え付いたり、襲ったりはしませんでしたが、家族以外の人にはシッポを振ったりして、愛嬌をふりまく事は決して無かったのです。
我々には当然ですが、シッポがちぎれるんじゃないかと思う程、振っていました。
本当に可愛いヤツでした…。
唯一、大変だった事は、朝晩2回の散歩です。
朝は午前4時、夜は午後8時、と決まっていました。
散歩は、当時、大学生だった私の仕事のようなものでした。
気候の良い春秋は微風が心地よく、夏は走って、汗をかくのも気持ちがいいものでした。
しかし、冬の午前4時の散歩にはまいりました。
散歩の時間になると、フジは必ず要求してくるのです…。
たまに、低い声で吠えるのは、近所の人達も『凄いね!』と感心しているのですが、ワンワンと連続して吠えると、当然ながら五月蝿(うるさい)ので『何とかしてくれ!!』となります。
寒い寒い日などは拷問みたいなものです。
内心『散歩に行きたくないな…』と思いますが、自分しかフジを連れ出す家族の者はいません。
フジの散歩のお陰かどうかでわかりませんが、全く風邪をひかなかったのは、家族で私一人でした。
それから風邪をひかない体質になったので、現在、診療所のスタッフ全員に『院長先生の風邪をひいた姿を見たことがない』と不思議がられているのです。
しかし、フジが死んでからは、犬を飼う気が全く失せてしまったのも、事実です。
一時、気違いみたいに、あんなに犬の専門書を読み漁って、みんなから『犬博士』と言われていたのに!!
あまりにフジに気を入れ過ぎて、気が抜けてしまったのです。
今でも散歩している犬を見るのは大好きですが、自分で飼おうとは全く思いません。
この心の変化はどうしてでしょうか?
これがイヌを愛した結果なのです…
藤千代の思いで

院長の独り言 407 ;後輩の教授の退職パーティー

つい先日、医局の後輩である教授が退職しました。
そして祝賀会が都内の有名ホテルで盛大に挙行され、私も招待されたのです。
50年ほど前、私の恩師である東京医科歯科大学 鈴木賢策教授の退職祝賀会に比べると、今回の祝賀会はたいへん盛大なパーティでした。
今回の後輩の祝賀会には、大きな丸テーブルが20以上有り、私が座ったテーブルに一緒に座った先生達は全員、50年以上も前に同じ医局に在籍していた当時の仲間でした。
まるで40~50年前にタイムスリップしてしまったようで、懐かしいやら、嬉しいやら…。
全く楽しいひと時を過ごす事が出来たのでした。
顔を合わすのは、数十年ぶりの先生ばかりです。
『本当に久しぶり!』
『懐かしいね〜』
『もう生きて会えないと思っていたよ!』
大学では、研究をする厳しさ、学生を教える大切さ、そして患者さんを治療して疾患を治癒させる目的を目指して、古い講座に、古い道具を使って頑張っていました。
医局員全員で切磋琢磨していた遠い昔を思い出し、切なく感じてしまいました。
医局に在籍していた時、楽しい酒も飲みましたし、仕事の上で言い争いもしました。
テーブルに着いた全員の頭の中に、医局にいた頃の、苦楽を共にした思い出が、私と同じく、走馬灯のように巡っているのでしょう。
みんな、神妙な顔をしながら乾杯を重ねたのでした。
いま思い出しても、当時の研究室は決して綺麗とは言えません。
実験器具も古く、色々な薬が保管されている薬品棚も、我々の机も、アチコチヒビが入っている有様でした。
現在の研究室をたまに訪ねると、診療道具も、使用する薬品も、全て大きく異なり、驚くほどの進歩が見られます。
研究室も、診療室も、格段に明るく、たいへん清潔になっています。
われわれが在籍していた頃の研究室は、お世辞にも清潔とは言えませんが、もう一度医局員に戻れるなら、風が吹けば窓がガタガタ音を立てる、そして慌てて歩くとミシミシ蝉のように鳴く床、如何にも昔の映画に出てくるような古い研究室で、昔の仲間と勉強したいと思います。
それにしても退職してからあまりにも時間が過ぎてしまいました。
過去に戻る事は不可能です。
残念ですが、懐かしい顔を見ることで満足しましょう。
同級生の一人は、『もう生きては会えないな…』と、独り言のように呟きました。
いいや友よ!また再び杯を重ねようよ。
まるで李白のような気分になりました。