院長の独り言 270 ; 岩手の豊かな稲穂を想いながら、銘酒『酔仙』を偲ぶ

東日本大震災による大津波で、無残にも消滅してしまった陸前高田の銘酒『酔仙』は、岩手を代表する銘酒として、その名を轟かせていました。
お酒の苦手な女性でも、このお酒を一度、口にすると、飲み易くて美味しいと、ファンになってしまうのです。
理由は、ゴクリと飲む喉越しに、何とも云えない清涼感が残るからです。
地元の美味しい水とお米が上手くマッチして生まれたもので、この陸前高田でしか造れない地酒でした。
当然の事ですが、銘酒品評会で、数々の受賞をしています。
なぜ『酔仙』と命名したのかと言えば、『酔うて 仙境に入る』と云う意味だそうです。
前置きはこの位にして、本題に入らせて貰います。
実は、当院受付の山口さんのお父上が、津波で大被害を受けた陸前高田の出身で、故郷の銘酒『酔仙』を大事に保管していたのです。
お父上は、私がかなりの呑み助なのを、娘さんから聞いていたようです。
『もう、二度と酔仙は飲めないかも知れない…』と、自分の為に取っておいた『酔仙』を、快く私にプレゼントして呉れたのです。
津波によって、酔仙酒造は全て流されて、酒蔵が消滅してしまったのです…。
東北地方には、小生、何度も訪ねているのですが、こんな大災害になり、『酔仙』をはじめ、多くの地酒を嗜む事が出来なくなってしまい、ガッカリしていたところです。
お父上から一升瓶の『酔仙』を頂いたので、早速、診療を終えた後、スタッフ一同で、ジックリと味わう事にしました。
この『酔仙』、常温で頂くのがベストかも知れませんが、冷やして頂く事にしました。
熱燗なんかにして飲んだら、艶消しもいいところです…。
全ての診療が終了し、後片付けを終えて、早速、医局に集合です。
飲めるスタッフと一緒に、お酒をガラスのグラスに注いで、乾杯!
コップに注がれた銘酒『酔仙』の色は、薄い琥珀色で、岩手の豊かな稲穂を想起させます。
スタッフ10名の内、男性2人、女性4人がお相伴にあずかりました。
空きっ腹で飲んだので、直ぐに、ほろ酔い機嫌になってしまった小生。
味は、喉越しまろやかで、少々辛口といったところでしょうか。
肴は何も無かったのですが、お酒だけで大いに楽しませて頂きました。
男性のドクターは勿論、女性軍もご機嫌に飲んでいました。
報道によると、この『酔仙』の酒蔵を再建するのは、大変、困難なようです。
酵母菌が全部、流されてしまったからです。
酵母菌は生き物ですから、全く同じものを造り出すのは、至難の業なのです。
多分、口にするのが、最後になるであろう銘酒『酔仙』を、皆で味わいながら何となくしんみりしてします…。
何はともあれ、お父さんも最後の『酔仙』飲みたかったでしょうが、われわれに譲って頂き、本当に有難う御座いました!
もう一度、『酔仙』、飲みたいなぁ~
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