改正入管法の成否は満足度次第

  • 今号は問答形式で執筆します。

 

  1. 外国人労働者を積極的に受け入れる入国管理法の改正案が12月8日未明、参院本会議で可決、成立しました。それに伴い、新在留資格「特定技能」が来年4月に導入されることとなりましたが、有識者のお1人でもある三浦代表幹事(外国人積極活用研究会)はどのように評価しますか?

三浦和夫代表幹事  そうですね、衆院で外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切った点は評価出来ますが、〝この国のかたち〟を変えるほど重要な法改正なので質疑の時間がもっと欲しかったですね。野党各党も多少の温度差はあれ、人口減少による産業界の人手不足の現状認識は一致しているのです。『受け入れるのはやむを得ないが、それに伴う労働者、生活者としての環境や条件等の整備などの議論も必要だ」という野党側の主張は妥当だと思います。

衆院での質疑応答の中で明らかにされましたが、技能実習の実態として、低賃金、劣悪な労働環境などが原因となって失踪した実習生が年間で7000人以上もいるというのです。ブローカーと呼ばれる仕事の紹介者が現れて、〝より高い賃金を求めて〟、技能実習生や他の技術者の〝引き抜き紹介〟が横行しているそうです。私は、そうした現象がなぜ発生するのかについてもっと質疑を行い、受け入れ拡大の舵を切ってほしかったと思います。

 

Q.新在留資格が公表されています。特定技能1号、同2号。さらに、登録支援機関であるとか云々。

三浦和夫 それらについては、政府の骨太方針が明らかになった7月時点で概要を耳にしていました。年間で数万人の外国人労働者をいきなり海外から受け入れるのは困難です。ある程度の日本語会話能力も必要です。

その疑問に答える現実的な対応策として、在留資格の期間満了を迎えた技能実習修了予定者を母体として、新たな在留資格を彼らに用意する案が内々示されたのです。ある程度の日本語会話能力、仕事と生活にも慣れた外国人技能実習生たちを対象としたことは、現実的な方法として妥当な策の1つであろうと思われました。

他方、政府部内では、技能実習を終えてすでに母国に帰国したOBの呼び戻しも案として検討の俎上に上がっていたようです。今後、その案も採用される可能性があります。また、それらを合わせても数として足りない時には、ASEANの友好国内で日本語を勉強している若者たちも対象として、現地で一定の試験を実施して合格者を呼び寄せてはどうか?といった案も聴かれました。考え方としてそれなりの合理性はあると思いますが、実施して良い結果が得られるかどうかは別問題です。

 

  1. そうなると、技能実習生としての在留資格満了見込者の多くが新在留資格を取得するかどうかが成否のカギとなりますね。

三浦和夫 その通りです。実際に改正法令を施行してみないとわかりません。

直近では毎年数万人以上の実習生が在留資格を満了して帰国しているようですが、実際に、対象となる彼らの全員が特定技能の資格を取得するかどうかはわかりません。あくまで個人的な直感的な予想ですがせいぜい6割程度ではないかとも言われています。

具体的には、登録支援機関を設置して特定技能取得者の需給調整がなされるのではないかとも言われています。それについては、法務省令等が来年2月頃に公表されるとも言われています。それを確認しないことには何とも言えません。説明会や申請手続きもあり、4月1日に改正法令を施行するには時間的にかなりタイトとなるでしょう。

 

Q.新在留資格が成功するためのカギは何だとお考えですか?

三浦和夫 新しい在留資格で新しい仕事に就いた技能実習生OBたちの満足度如何にかかっています。不満であれば就労の継続は困難となります。満足度が高ければ、現役で働く人たちや後続の実習生たちは新しい在留資格資格を支持するでしょう。

例えば、①技能実習生と比較して賃金などの雇用条件が具体的に改善されること、②労働安全衛生が充実していること、③苦情対応が仕組みとして整備されていること、④福利厚生が充実していること、⑤転職が柔軟に出来る仕組みなどが整備されていること。それらについて「概ね満足」の評価を得られることが成否のポイントとなると思います。

満足度が高ければ技能実習生たちは新在留資格に期待を寄せます。低ければ評判は悪くなり新設の在留資格の効果はありません。それらは、人材サービス業の派遣や請負現場の労働者でも同じことです。

(次号に続く)