すでにご承知と思いますが、去る9月25日午後、小生は、大阪市北区中之島の関西生産性本部会議室にて、同本部会員で組織する「人事労務研究会」の25社の会員の皆さんを前に「グローバルスタッフの現状と今後」について、約1時間半講義をしてまいりました。席上、GSEA(グローバルスタッフ雇用支援協会)の会員企業であるビーリンク社の松川将人さんが終始小生をサポートをしてくれました。改めて同氏に感謝します。
講演は、コロナ禍の影響でリモート方式となってしまいましたが、以下、その模様について会員各位にリポートさせていただきます。少し長文となりますが、ご容赦ください。
当日の講演者は、GSEAの私と、日本特殊陶業株式会社の経営戦略本部戦略人事部の部長と課長様方3人。
日本特殊陶業社は名古屋市に本社を持ち、各所で機械工作部品等を製作して海外輸出又は東南アジアに現地工場を備えて取引する有力企業です。年商は約4500億円。
また、同社はダイバーシテイ(多様性)を経営理念に掲げるなど、グローバルスタッフ雇用の面でかなり進んでいる企業です。インドネシア出身の男性社員も紹介されてましたが、N1の日本語能力を備え日本人とほとんど変わりません。私の質問にもてきぱきと答えました。
前置きが長くなりました。以下、三浦講演の報告に移ります。
GSEAの皆さんであればすでに知識として把握されているグローバルスタッフの就労の現状とこれまでの推移、そして、コロナ以後の見通しについて話しました。
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席上、私は、コロナ以後の経済再生の担い手の1つとして、グローバルスタッフの確保と雇用は有力な対応策であると述べました。日本国内における現状5000万人被雇用労働者の中に占めるグローバルスタッフ数は昨秋時点で約150万人で、全体の約3%を占めています。これは派遣労働者の実稼働数とほぼ同じ規模ですが、本年2月以来のコロナ禍の影響により、新規入国労働者数は急激に減少しました。しかしながら、政府が9月に経済再生の政策に転換したことで、来年以降は順次持ち直すことが期待されます。
また、来夏は東京五輪が予定されているので景気は順調に回復し始め、夏場を前後にグローバルスタッフの雇用は急増する可能性があると述べました。
加えて、日本国内の人口動態を観ても被雇用労働者の中長期的な減少は避けられず、グローバルスタッフの採用は今後10年を待たずに、欧州並みの10%以上(日本国内で500万人以上)が見込れるのではないか、と示した次第です。
そして、そのような時代を迎えると、「長期に滞在する外国人労働者の参政権問題、帰化手続きの簡素化などが政治課題となり得る、コロナ禍の収束後を生きる私ども日本人にとっても2020年は歴史的にも大きな節目となったと言えるでしょう」と述べました。
他方、外国人労働者の雇用上の留意点として、平素私が抱いている3つの評価基準というか努力目標として、皆さんに以下のように伝えました。
1つは、日本語の会話能力の充実と評価。2つは、職務能力の向上の評価。3つは、職場のコミュニケーション能力の評価。
それらの評価を各10点満点として、会社側とグローバルスタッフ本人がそれぞれ評価して可視化します。そして、会社の上司とグローバルスタッフが会話し、良い点を高く評価して課題点を共有することが大切です、と述べました。
それは、筆者がかつてセンバツ高校野球を取材担当した時に学んだ出場校チームの評価基準が1つのヒントとなっています。野球は、投手力、守備力、打撃力の3つで評価されます。バランスの取れたチームは上位に進出することを学びました。
それを応用し、例えとして、会社側の評価点と本人の評価点を比較し合って話し合うことも良いのではないかと述べた次第です。叱って注意することも時には必要ですが、感情的に接するよりもコミュニケーションを頻繁に図りながら励ますという配慮が求められるように思います。
もう1つ提案しました。今回の受講企業25社の皆さん(いずれも企業人事・労務担当幹部、同労組幹部)の約半数が資本系列の人材派遣会社を有しています(例:日立→日立マクセル、大阪ガス→大阪ガスビジネスサービス、パナソニック→パナソニックエクセルスタッフなど)。そういう企業は系列派遣元企業にグローバルスタッフの“仕入れ”を要請し、人材紹介又は労働者派遣というサービスを通じて提供してもらい、双方の連携によって、グローバルスタッフの定着を図って良いのではないかと述べた次第です。
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そのように考えると、人材ビジネス業界の今後にとって、グローバルスタッフの雇用と派遣、業務請負、有料紹介は欠かせない事業となると思われます。
フィリピンのJEPPCA (ジェプカ)という日本向けのスタッフ送り出し団体の幹部は次のように述べています。
「大切なフィリピン人スタッフを無理解なエンドユーザーに有料紹介するよりも、労働者派遣(dispatch)のシステムを生かして、人材派遣会社に派遣後のフィリピン人スタッフをフォローをしてもらう方が合理的ではないか」と。
厚生労働省調査結果でも、年々、外国人スタッフを派遣するケースが増えています。今後の課題としては当該サービスの質的充実であろうと思います。