中間業務層に焦点を当てた外国人材サービス

外国人労働というと「特定技能」と思う浮かべる昨今ですが、それがすべてではありません。それ以外の外国人活用についても検討し始めている人材サービス会社が増え始めています。

外国人積極活用研究会が東京・有楽町の国際フォーラムで主催した2月27日のセミナーに参加したある大手資本系列の人材会社は、現在、社内で準備の段階で、「外国人労働者の紹介ビジネス検討」と題した検討資料を元に筆者に構想を説明しました。

検討の課題として、以下5つが記載されています。

  • 外国人労働者の採用先サーチ、②外国人労働者のスキル付与、③外国人労働者のビザ取得、④受け入れ企業群の市場開拓、⑤競合他社との差異化。

また、「外国人材」と「日本労働市場」を左右両局に置いて、その間に、①採用先の確保、②スキル付与、③ビザ取得と配置―などのように分けた上で、「外国人留学生の日本企業就業サポート(専門事業社との提携)を準備の課題としています。それを外国人サービス事業案として社内に発信してコンセンサスを取り始めているのです。

同社の外国人活用は、前述のように、語学留学生を対象としているのが特徴。ハイスキルの高度人材層と単純労働者層の中間的サービス業務に日本語を習得した外国人の配置を検討しているようです。

事務系業務のいくつかの派遣元企業も概してそれに近い職域を対象に準備しており、同社の採用方針、教育、配置、評価などの構想について、筆者は、妥当な事業案ではないかと思いました。

同社のもう1つの事業ポイントは、〝川上から川下〟までのすべてを自社でまかなおうとするのではなくて、必要に応じて、専門的なパートナーと提携してエンドユーザーにサービスを提供しようとする構想にあります。外国人という特殊の人材であり、すべてを自社で賄うのは非合理です。

ビジネスエチケットの教育、悩み等の相談業務を含めたスタッフケアサービス、日本語補講などは連携の対象となるでしょう。

厚生労働省調べによると、外国人の労働者派遣や請負現場への配置が前年比で大幅に伸びています。全体的に製造業が目立ちますが、オフィス事務系やサービス系への増加も、今後、予想されるでしょう。人材サービス業界こそ外国人活用のさきがけとなってほしいものです。

改正入管法施行以後を予想

★問答形式で掲載

Q.特定技能という新在留資格の稼働日が近づきましたが、その後の展開をどう予想しますか?

三浦(研究会代表幹事): そうですね、なにぶん、改正入管法が昨年12月の臨時国会で成立したばかりなので、関係行政機関、新在留資格の外国人を活用する特定業種の産業界とって期待と不安が交錯したままに施行日を迎えるのだろうと思います。また、登録支援機関として認可され、新サービスとしたい人材業界としても同様です。

 

Q.研究会主催の「外国人雇用促進セミナー」(2月27日、東京国際フォーラム)には多くの人材業界関係者が受講しましたね?

三浦:そうですね。特定技能に関するセミナーは昨年11月に次いで2回目ですが、日増しに関心が高まっていることがよく分かりました。2回のセミナーの参加人数の合計は約180人です。

研究会幹事団や事務関係者が集客にずいぶん頑張ってくれました。自社や自分の仕事をこなしながら運営等にエネルギーを注ぐというのは並大抵のことではありません。それも、「世の為、人の為、業界の為」で頑張って下さったご厚意に感謝しています。

 

Q.さて、本題に移りますが、新在留資格の評価と今後の推移についてどのようにお考えですか?

三浦:なにぶん、政府が「特定技能」という新在留資格案を国会に提案したのは昨年11月の臨時国会で、採決されたのは12月です。しかも法施行は今年の4月ですから準備不足は否めません。

しかしながら、人口減少と労働力不足は悪化する一方であり、新在留資格の創設を認める改正入管法の早期の施行はやむを得ない措置だと評価します。今年の通常国会での提案となれば夏に参院選が予定されており、与党関係者の話では廃案の可能性も指摘されていました。採決を急いだ理由がそこにあったようです。

採決を急いだだけに、課題は今後にあると言えそうです。

Q.課題を少し具体的にお聞きします。

三浦:ここでは、特定技能労働者を実際に受け入れる側に絞って3点を指摘したいと思います。

第1は、先の臨時国会の質疑でも明らかにされたように、特定技能で働く人の大部分が在留期限を満了する技能実習生を母体としています。彼らの需給調整の任にあたるのが登録支援機関となりますが、その機能が上手く回転出来るかどうかが第1のハードルとなるでしょう。なにぶん、〝急造〟の印象は否めません。その機能がマイナス評価となれば、混乱は増幅されるでしょう。

第2は、特定技能労働者を雇い入れる事業主たちの対応が問われます。技能実習生の監理団体であれば対応に慣れていますが、特定技能労働者を雇用する企業、団体、個人の多くは不慣れです。彼らの雇用・労働管理が上手くいくかどうかが特定技能の成否にかかっています。

第3は、特定技能労働者の雇用に伴う苦情・トラブル防止策の準備が後手に回っており、早急な対応策を講じる必要があります。その対応が不充分だと新たな労働紛争が予想されます。国はもとより、雇い入れる企業、団体等の受け入れ態勢の整備が急務です。

 Q.それらは、雇用する以上当たり前のことだと思いますが、法施行までの時間がわずかだったので、心配ですね。

三浦:そう思います。人口減少と労働力不足は周知の事実です。受け入れのバルブを緩めるのは良いとして、技能実習の修了者とはいえ外国人です。外国人雇用が初めての企業や団体等も多く、その辺の対応策が同時並行して行われないと混乱が予想されるのです。

特定技能予定労働者にとって、今回の措置は、ある意味で、就職活動みたいなものですよね。就職戦線で採用が容易に決まらない元技能実習生たちも出てくるかもしれません。彼らにとって決まるまでの宿泊や生活費、小遣いはどうなるのだろうか?その辺について素朴な疑問を抱いており、推移を見守りたいと思います。

 Q.三浦さんは、講演などでも外国人雇用についてサポート態勢の充実を訴えていますが、その辺についてお話しを少ししてくれませんか?

三浦:人材サービス関係者のレベルで言うと、労働者派遣事業と同じです。営業担当者が担当する派遣スタッフの数が増えれば、アフターフォローは後手に回りがちとなります。派遣法令施行後の10年間は、派遣トラブルの頻発の歴史でもありました。ユニオンが結成されて解決一時金などの支払いで揉めた経験もありました。原因の1つとして、派遣労働者の配置数の急増に派遣元側のフォロー態勢が後手に回ってしまったためです。

「遅刻が頻繁だ」、「名前で呼んでも返事がない」、「離席が目立つ」、「ちんたらしている」等々。

外国人労働者も同じです。人手が足りないので産業界は「早く、早く」とさかしますが、外国人雇用は不慣れです。雇用・労働トラブルによる苦情相談や不満は登録支援等関係機関に押し寄せる可能性があり得るのです。

だから、雇用企業のサポート態勢の充実も同時並行して整備しなければなりません。

Q.具体的にはどういうことですか?

三浦:法定を含めた雇用管理体制があります。それにしたがってきちんと実行する必要があります。

入社時のオリエンテーションの実施、トレーナーの確保、賃金・労働時間の適正管理、有給休暇、福利厚生の整備、苦情を含む相談窓口の設置、生活上のアドバイス、トラブル発生時の対応策、必要に応じた日本語の補講支援などがありますね。特定技能労働者の母体は今のところ技能実習終了者ですが、今後はそれ以外の外国人も現れるでしょう。その場合には通訳のできる人材の採用も考えなければなりません。外国人労働者の管理は容易ではありません。

その辺の雇用サポート態勢を少しづつ関係企業と担当幹部の皆さんが外国人積極活用研究会で学び、語り合い、時には教えあい、情報を共有して、外国人雇用のサポート態勢を作り上げたいと思います。